オシロスコープの電圧・時間はどれくらい信じられる?(その2)

 周波数によらず一定の減衰比を得るために

プローブでは直流だけでなくすべての周波数で同じ減衰比を得るために、図1のようにプローブ先端の9MΩに並列にコンデンサが挿入されます。

補正調整を適切に行うことで周波数特性を平らにすることができます。

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図1 周波数特性を平らにするための補正

図2は補正用半固定コンデンサを適切に調整した例です。

オシロスコープのフロントパネルに装備されているプローブ補正調整用信号(キャリブレータ)にプローブを接続し、矩形波が平らになるように調整ドライバで調整します。

一部の製品ではメニューで調整を行います。

正しく調整された状態で10MHzの方形波を測定すると振幅は3.83Vになりました。

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図2 適切に補正された場合

 

プローブの補正が不適切な場合には予期せぬ誤差を生じます。

 

図3は過補正の場合です。

高周波領域で減衰比が小さくなった結果、プローブ補正調整用信号ではサグが発生、10MHzの方形波では振幅が5.7%増えています。

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図3 過補正の場合は高周波で振幅が大きくなる

図4は逆に補正が足りない場合です。

高周波領域で減衰比が大きくなった結果、10MHzの方形波の振幅は6%減少しています。

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図4 補正が足りない場合は高周波で振幅が小さくなる

いずれの場合も本来のDC確度を大きく超える誤差が発生しています。

プローブの補正はプローブ本体を調整するものではありません。

組み合わせて使用するオシロスコープの入力容量により補正量は変化します。

厳密にいえばチャンネルを変えるだけでわずかですが補正がずれる可能性があります。

同一型名のオシロスコープでも入力容量に差はあり得ます。

このためオシロスコープの入力チャンネルと組み合わせるプローブを決めておくことがベストといえるでしょう。

テクトロニクスのオシロスコープではチャンネル毎にプローブのシリアル番号をオシロスコープが認知します。

補正作業はメニューより行えますが、一度すべての組み合わせで補正を行っておけばその後は組み合わせを気にせずに使用できます

冒頭でデジタル・マルチメータの入力抵抗が回路の動作に与える影響について述べましたが、プローブに関しても影響は顕著に現れます。

ここでロジック・デバイスの簡単な出力モデルを図5のようなRC回路と考えます。

出力端子にはRC成分により特定の立上り時間のパルスが出力されます。

この波形を観測するためのプローブは有限の入力抵抗、入力容量を持ちます。

このため

 

●入力抵抗が回路の出力抵抗が十分に大きければ振幅に対する影響は少ない

●入力容量が回路の入力容量が十分に小さければ立上り時間に対する影響は少ない

ことになります。

一般に10:1パッシブ・プローブの場合

●入力抵抗 10MΩ

●入力容量 約10pF

です。

10pFという容量はゲートが一つ加わった、負荷が増えたのと同じことになり、波形に対する影響を無視できません。

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図5 プローブの入力抵抗、容量の影響

データシートでは10:1パッシブ・プローブの周波数帯域は500MHzあるので問題ないのでは?という質問がありますが、計測器の周波数帯域の定義は「ソース・インピーダンスが25Ωにて」とされています。

具体的には図6のように出力インピーダンス50Ωのジェネレータを50Ωで終端(このためソース・インピーダンスは25Ωになる)した場合の結果になり、プローブの入力容量と本体の帯域制限により周波数帯域は決まります。

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図6 プローブの周波数帯域の条件

実際の回路では測定対象の出力インピーダンスは一定ではありません。

そのため測定系の周波数帯域は一定ではなく、本来の周波数帯域を十分に確保した上で入力容量による影響(負荷効果)を考慮すべきでしょう。

アクティブ・プローブの場合はプローブ単体でゲイン確度が規定されています。

例えばテクトロニクスの高電圧プローブ THDP0200ではゲイン確度2%、電流プローブ TCP0030Aでは1%以下になります。

プローブとオシロスコープを組み合わせた場合のシステム確度については何も記載がありません。

誤差が相殺される場合もあれば、増える場合も考えられます。

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図7 オシロスコープとプローブがそれぞれ確度が決まっているケース

自己責任になりますが、比較校正を行い、測定結果を補正することでより高い確度を期待することができます。

図8は高電圧プローブ&オシロスコープの例です。

高電圧出力可能な直流電源出力をプローブに入力します。

この電圧をデジタル・マルチメータとオシロスコープで測定します。

測定確度の高いデジタル・マルチメータの値は真値に近いはずなので、これを基にオシロスコープの結果に補正をかけることができます。

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図8 電圧プローブでの電圧確度の補正

電流プローブの場合は適切な負荷抵抗に既知の電流を流し、デジタル・マルチメータの測定結果とオシロスコープの測定結果を比較し補正をします。

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図9 電流プローブでの電圧確度の補正

以上の工夫により、データシートに記載された以上の確度が期待できます。