パワーエレクトロニクス向き新世代の電圧・電流プローブ

パワーエレクトロニクス向き新世代の電圧・電流プローブ  
デジタル・マルチメータで電流を測定する場合には回路を切断して計測器を挿入します。
測定器の入力抵抗を電流が流れることで発生する電圧降下を測ることで電流を測る仕組みです。
しかし回路を切断することは面倒な作業であり、電流波形の観測には回路を切る必要がない図1のようなのクランプ式電流プローブ/センサーが広く使われてきました。
電流センサー部分はコの字型のコアとI型のコアを組み合わせており、簡単に被測定ケーブルを通すことができます。
 
特にホール素子を併用した機種では直流電流から対応できます。
 
しかし問題が無いわけではなく

●コアを使用するため許容電流を超えるとコアが飽和し正確な測定ができない
●個々の製品で対応できる電流幅が大きくない
●コアが帯磁するため定期的な省磁作業が必要
●大電流タイプはコアサイズが大きくなり、物理的に回路に挿入困難になる

という制約があります。
 
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図1 クランプ式電流プローブの仕組みと特徴
 
サイズの問題に関しては図2のようなロゴスキーコイル式電流プローブである程度解決可能です。
コアを有しない空芯コイルのため基本的に飽和することがなく、大電流に対応できます。
また動作環境はクランプ式より広く、より広い温度範囲で使用できる製品もあり、耐環境実験では有利です。
ただし直流電流に対応できない制約があります。
 
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図2 ロゴスキーコイルの仕組みと特徴
 
 
最近の計測要求
最近のパワー・デバイスの評価においては電圧波形、電流測定に厳しさが増しています。
電圧波形に関しては従来の高電圧差動プローブの弱点を軽減した光絶縁プローブが各社からの登場し、かなりの改善がなされています。
 
一方電流波形測定では従来からのクランプ式電流プローブでは以下の問題があげられます。
 
●クランプ部分の物理的サイズの問題、寸法の大きな大電流対応プローブは特に問題
●クランプするリード線のもつ寄生インダクタンス
●周波数とともに増加する挿入インピーダンス
●帯磁の問題
●大電流対応プローブでの周波数帯域の制限
 
またロゴスキーコイルでは直流未対応、高速信号に耐する周波数帯域の制限があります。
スイッチング速度の高速化が進み、パワー・デバイス近傍の配線長の寄生インダクタンスが回路動作に影響する現状では、比較的小型のロゴスキーコイルといえども物理的にな大きさが問題になります。
 
電流プローブの負荷効果について
電圧プローブとは異なり、クランプ式電流プローブ、ロゴスキーコイルいずれも直接回路に挿入するわけではないので、回路に対する影響、負荷効果はないように思えます。
 
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図3 クランプ式の負荷効果は?
 
図4はテクトロニクス TCP0030Aの挿入インピーダンス、1MHzにて50mΩの挿入インピーダンスを持ちます。
また挿入インピーダンスは周波数の上昇とも増加するため、主に誘導性負荷になります。
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図4 テクトロニクス 電流プローブ TCP0030Aの挿入インピーダンス (TCP0030Aのマニュアルから抜粋)
 
さらに図5のように最低でも4cm程度のリード線を考えると約40nHの寄生インダクタンスが加わり、これは1MHzにて約0.25Ωに相当します。
 
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図5 現実のクランプで発生する寄生インダクタンス
 
最近のパワー・デバイスを例にすると

●電流 数10A
●オン抵抗 50mΩ
●立上り時間 数ns

程度の性能を持ち、プローブの影響がかなり大きくなることが考えられます。
 
一方、大電流プローブの代表として同じくテクトロニクスのTCP404XLは図6の挿入インピーダンスを持ちます。
挿入インピーダンスは小電流タイプより低いものの、クランプするためのリード線は最低10cm(約100nH)が必要になりこれは1MHzにて約0.6Ωのインピーダンスになります。
 
つまり回路に余計な寄生インダクタンスが追加されることになります。

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図6 テクトロニクス 電流プローブ TCP404XLAの挿入インピーダンス (TCP404XLのマニュアルから抜粋)
 
電流測定における寄生インダクタンスの影響
ここで測定におけるインダクタンスの影響を考えてみます。
図7のRL回路にステップ電圧を印加すると電流は指数関数で増加します。
これは周波数帯域が制限されることを意味します。
そしてこの立上り時間は抵抗成分Rが小さい程大きくなります。

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図7 RL回路のステップ・レスポンス
 
物理的寸法が大きな電流プローブでは高速化するパワー・デバイスの電流測定は容易ではなく、物理的寸法で有利なシャント式が考えられます。
もちろんシャント抵抗は単純な純抵抗ではなく、簡単には抵抗に寄生インダクタンスが加わった形になります。
 
電流プローブは図4、図6のように入力インピーダンスに誘導成分を持つため、信号源のインピーダンスにより立上り特性、周波数帯域に影響を与えます。
実は計測器の周波数帯域はソース・インピーダンス 25Ωで規定されています。
電流プローブも同じで周波数帯域は図8の設定で行います。
 
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図8 クランプ式電流プローブの周波数帯域評価
 
そのためソース・インピーダンスが極めて低い、例えば高速リカバリの電源の急峻に変化する電流測定ではのRが小さくなり、波形が鈍ってしまいます。
 
このため電流プローブによる測定では

●電流プローブ自体のインダクタンス成分
●プロービングにおける寄生インダクタンス

両方を低減させることが求められます。
 
続く