電流が流れるところには、電界と磁界が発生します。 図1はプリント基板を流れる電流と、発生する電界、磁界のイメージです。電界はパターンからグラウンド面に向かい、磁界はパターンを中心に回転方向に発生します。図1 プリント基板に発生する電界と磁界 図2はパターン下のグラウンドプレーンが切れている例です。周波数が低い場合は特に考慮する必要はありませんが、高周波信号では図1の電気力線が変化し信号伝送路のインピーダンスに不整合が生じます。インピーダンスの不整合は輻射ノイズの一因になります。 図2 信号パターン下のグラウンド層が切れている 生産される機器はすべてEMC(Electromagnetic Compatibility)対策を施し、EMC規格に適合しなければなりません。検査は自社内サイト、外部サイトで行われますが、検査落ちをすると製品化スケジュールに多大な悪影響が生じるため必ず合格しなければなりません。そのためボードレベルでの不要輻射ノイズの抑制は重要です。 このような輻射ノイズですが、簡単なプローブで空間磁界を検出することができます。図3は代表的な近磁界プローブおよび電界プローブで、スペクトラム・アナライザやオシロスコープに接続して使用します。図3 代表的な近磁界プローブおよび電界プローブ市販の製品を使用することがベストですが、簡単な観測用の近磁界プローブであれば同軸ケーブルで製作することも可能です。図4は比較的簡単な構造例です。特性インピーダンス50Ωの同軸ケーブルをリング状にループさせ、ケーブル先端の芯線と外部シース(網線のシールド)を両方ともループの根本のシースに接続します。またループの半分のポイントのシースを切断します。プローブは50Ωで終端します。 接続先がスペクトラム・アナライザ、高速オシロスコープの場合は入力インピーダンスが50Ωなのでそのまま接続可能ですが、汎用オシロスコープの場合は入力インピーダンス1MΩ/50Ωの切り替えを50Ωに設定します。入力インピーダンス1MΩのみの場合は50Ω終端抵抗を併用します。 図4 近磁界プローブの構造 近磁界プローブの動作原理は図5のように考えられます。低周波においては銅でできた外部シースは電界をシールドできる一方、磁界をシールドすることはできません。外部シースを通り抜けた磁界は内部の芯線によるループを横切り、磁界の変化率に応じた電圧を発生、出力されます。 高周波において外部シースは電界、磁界ともにシールドします。ギャップによりC字型のシースのギャップに電圧が発生、芯線により出力されます。 図5 近磁界プローブの動作原理 写真1、2は製作過程です。同軸ケーブルには1.5D-2Vを使用します。ループの直径は任意です。小径であれば感度は低くなりますがピンポイントで磁界を検出できます。大径であれば逆に感度は高くなりますが、広い範囲の磁界を検出することになります。 ① ではループする同軸ケーブルの半分の位置でシース(銅のシールド)を取り除きます。② この箇所は構造的に弱くなるため熱収縮チューブでカバーし、補強します。 写真1 近磁界プローブの製作過程-1 ③ 同軸ケーブル先端の外皮を剥き、芯線を取り出した後シース(シールド)と撚り合わせてはんだ付けをします。④ ループの根本部分の外皮をはがし、③の先端をはんだ付けします。根本の部分を手早くはんだメッキを施し、芯線を溶かさないよう手早く先端を根元にはんだ付けします。⑤ 接続部はブチルテープなどで補強します。 写真2 近磁界プローブの製作過程-2 写真3は完成した近磁界プローブです。ループの大きさを大・中・小と用意すると便利です。 写真3 完成した近磁界プローブ 写真4は制作した近磁界プローブを用いてスイッチングアンプ出力付近の磁界を検出した例です。使用したオシロスコープの入力インピーダンスは1MΩのみのため、50Ω終端抵抗を併用しました。 写真4 スイッチングアンプの磁気ノイズの測定風景 図6は測定結果です。スイッチング周波数は約300kHz、FFT演算を行えば周波数成分を解析することができます。 正式なEMC試験は離れた場所での電磁界を評価します。一方近磁界プローブによる測定はプローブの位置におけるピンポイントの磁界を測定するものです。ある意味定性的な確認になりますが、EMC対策においては便利なツールであると思います。 図6 検出されたスイッチングノイズ