機器が安定した動作をする要は電源と言っても良いでしょう。 動作が何かおかしい場合は電源の確認から始めることが基本です。電源の確認では電源電圧を確認した後、ノイズが規定範囲に収まっているかどうかを調べます。 図1は商用電源で動作する機器の例です。電源ノイズは大きく三つに分類できます。 ● 商用電源周波数に由来するノイズ(100Hzまたは120Hz)● スイッチング電源の発振周波数に由来する成分(数100kHzを中心に常に変動することが多い)●搭載しているロジック・デバイスの動作により発生する高周波ノイズ 図1 電源ラインに含まれるノイズ これらのノイズを観測するためには適切なプローブが必要になります。表1に代表的なプローブの使い分けをまとめました。 表1 ノイズ測定のためのプローブの特徴と問題点 商用電源周波数に由来するノイズの観測100/120Hzと周波数が低いため、電圧感度を稼げる減衰比1:1のパッシブ・プローブで対応できます。オシロスコープの最高感度が1mV/divであればそのままの感度で測定ができます。直流成分は観測する必要がないため、オシロスコープの入力カップルはAC結合にすることで交流成分であるノイズだけを高感度で観測できます。負荷変動による直流電圧の瞬間的な変動の観測はDC結合+オシロスコープのDCオフセット機能により可能になります。 減衰比10:1になるパッシブ・プローブ、アクティブ・プローブの場合、電圧感度が最高10mV/div前後になるため感度が不足する懸念があります。 スイッチング電源に由来するノイズの観測スイッチング周波数は数100kHzですが、ノイズ形状はスパイク状のため高次の高調波成分を多く含みます。そしてスイッチング電源、パワーのあるスイッチング回路はその周辺に電磁気ノイズを輻射しています。このためプローブのグラウンド線などのアクセサリにこのノイズが飛び込んでしまい、プローブの使い方には注意は必要です。プローブの特徴を検証する前にプローブの使いこなしを確認します。 上の波形は減衰比10:1/1:1切り替えのパッシブ・プローブを10:1にて、下の波形は1:1での結果です。図2は通常のグラウンド線による観測例です。図3は最短のグラウンド線による観測例です。 図2 減衰比切り替え(10:1 1:1)プローブでのノイズ測定結果(通常のグラウンド線) 図3 減衰比切り替え(10:1 1:1)プローブでのノイズ測定結果(最短のグラウンド線) 通常のグラウンド線では観測されるノイズ振幅が6倍ほど大きくなる、つまりグラウンド線が空間ノイズを捕らえるアンテナになってしまいます。スイッチング回路周りの波形測定では「グラウンド線は最短」、これが鉄則です。 上側の10:1パッシブ・プローブ、下側の1:1パッシブ・プローブでの振幅を比較すると5割ほど10:1の方が大きくなります。図4はその原因を確認するため時間方向に拡大表示した例です。減衰比1:1では細かい、周波数成分の高いノイズが取り込めていないことが分かります。つまり、周波数帯域の面から、スイッチング・ノイズの観測には1:1パッシブ・プローブの周波数帯域は十分ではないことになります。 図4 周波数帯域によるノイズ振幅差 では減衰比10:1パッシブ・プローブがノイズ観測に向いているかというと、図3の観測例では電圧感度は10mV/div、実際のオシロスコープの感度は1mV/divで動作しています。オシロスコープによっては1mV/div、2mV/divは電圧方向に拡大表示することもあり、この点から減衰比10:1は役不足といえます。このことは同じく減衰比10:1になるアクティブ・プローブでもいえます。 ロジック・デバイスの動作に由来するノイズの観測ロジック・デバイスの動作が変化に伴い電流が瞬時に変化、それより電源にノイズが発生します。このノイズは周波数が高いため、その観測に使用するプローブにも高い周波数帯域が必要となり、またノイズ振幅の点から減衰比はできるだけ小さいことが望まれます。計測器メーカーからは各社専用の高周波電源ノイズに特化したアクティブ・プローブが用意されています。これらのプローブを使用することがベストなのは言うまでもありませんが、一部機能に制限はあるものの少しの工夫でこのノイズを観測することができます。 簡単に作れる電源ノイズに特化したプローブ図5は入力インピーダンスを50Ωに設定したオシロスコープに特性インピーダンス50Ωの同軸ケーブルを接続した例です。この場合、同軸ケーブル先端からオシロスコープ側を見たインピーダンスも50Ωになり、あたかもオシロスコープの入力コネクタが同軸ケーブル先端に移動ことと同じになります。つまりオシロスコープの電圧感度、周波数帯域がそのまま同軸ケーブル先端にて可能になります。 図5 50Ω同軸ケーブルの動作 図6のように同軸ケーブル先端にコンデンサを取り付けると直流成分は通過できませんが、コンデンサと入力抵抗50ΩからなるCR回路によりハイパスフィルタが形成され、カットオフ周波数 以上はそのままオシロスコープに入力されます。つまりカットオフ周波数以上ではオシロスコープの性能がフルに発揮できる減衰比1:1のプローブになります。また50Ω系の測定になり、ノイズフロアが下がることも期待できます。プローブとしてのAC入力インピーダンスは50Ωになりプローブの負荷効果が気になりますが、市販の専用プローブも同等です。 図6 電源ノイズ専用のパッシブ・プローブ 写真1は製作の過程です。同軸ケーブルは太いほど高周波における減衰は少なくなりますが、ここでは使い勝手の良い太さの1.5D-2Vを使用、コンデンサは高周波特性に優れたセラミック・コンデンサ 0.22μVを同軸ケーブル先端に取り付けます。先端はターゲットに直接はんだ付けして使用します。 写真1 製作過程 写真2は、完成した電源ノイズ専用プローブです。写真2 電源ノイズ専用プローブの様子 図7はUSBインターフェースの電源ライン5Vに含まれるノイズの測定例です。プローブの減衰比は1:1なのでオシロスコープの電圧感度は5mV/divはそのまま適用されます。オシロスコープの入力インピーダンスが50Ωであることもあり、ノイズフロアの低い測定が可能になります。 図7 USBインターフェースの電源ノイズ測定例