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Q. レンタル料金の算出方法を教えてください。

A. レンタルプログラムページよりご確認ください。 詳しくは こちら(レンタルプログラムページ) よりご確認ください。 ご注意 ※機器により料金が異なりますのでご注意ください。 ※割り引きの適用除外がございますので、レンタル料率表の注記をご確認ください。

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プローブの出入力比はなぜ10:1なのでしょうか?

オシロスコープに付属されるプローブは減衰比が10:1です。なぜ感度が1/10に落ちるプローブを使うのか説明します。 写真1は各社の代表的なオシロスコープと付属のプローブです。 確かに付属のプローブの減衰比は押しなべて10:1です。 オシロスコープ単体で使う時に電圧感度を10mV/div(1目盛り当たり10mV)にすれば感度はそのままですが、付属のプローブを使うと100mV/divに、感度は1/10になります。 写真1 代表的なオシロスコープと付属プローブ なぜ10:1のプローブを使うのか? その理由を理解するにはオシロスコープの入力端子にまで遡らねばなりません。 高周波用計測器の代表であるスペクトラム・アナライザーの入力インピーダンスは50Ωです。 50Ω系の伝送路をそのまま接続することを前提としており、つまり計測器が50Ωの負荷として扱われます。 本来50Ωの負荷が接続されているところに計測器を接続する形、または何らかの形でインピーダンス整合を取りつつ信号を分岐、取り込むことになります。 図1 50Ω系の伝送路に負荷として扱う入力インピーダンスが50Ωの計測器 高周波の測定では図2のようにパワー・スプリッタを併用して電力の測定をすることもあります。 図2 パワー・スプリッタを使っての測定 またUSBやPCIeなどの高速シリアルバスの波形評価では信号取り出しにプローブは使わずに、オシロスコープの50Ω入力を負荷としてダイレクトに受信します。 図3 オシロスコープの伝送路が負荷として波形を測定 USB2.0の最高データレートは480Mbpsです. 規格制定時の波形試験ではプローブを使い信号をピックアップしていました。その後デバイスの速度が向上したためか、試験の再現性の点からプローブを用いずにダイレクトに受信する方法に改められました。 実はプローブによるピックアップにはチャレンジがあるのです。 データレコーダやオシロスコープなどを使い回路の信号の様子を観測したり、ピックアップしたりするにはプローブを使いますが、プローブは回路の動作に影響を与えてはなりません。 しかし電子回路である限り、有限のインピーダンスを持つため回路の動作に影響を与えます。 それが「プローブの負荷効果」と呼ばれる現象です。 現実には図4のように電圧プローブには高い入力インピーダンスが必要です。また電流プローブには低いインピーダンスが必要です。 図4 回路にプローブを挿入するには高い入力インピーダンスが必要 世の中には単なる同軸ケーブルと電気的には同等の構造になる1:1プローブが市販されています。 図5のように通常の同軸ケーブルでは芯線とシールド部間には1mあたり約100pFの容量があります。 2mの場合は約200pF、これにオシロスコープの入力容量が加わった容量が回路に加わります。 図5 1:1プローブは負荷が重い 市販のプローブでは低容量の同軸ケーブルが使われますが、それでも図6のようにオシロスコープなどと組み合わせて100PF以上の入力容量になります。 図6 1:1プローブの実際 オシロスコープやデータレコーダは元々が電気を目で見る、回路に現れる電圧波形を観測する目的で作られ、回路への影響を減らすため筆者の知る限りほとんどが入力インピーダンスは1MΩでした。 デジタル・マルチメータでは入力抵抗はさらに高く10MΩが一般です。 また入力回路の寄生(浮遊)容量、昔は50pF程度ありました。 これに接続ケーブルの容量も加わるために、容量を減らすべく10:1プローブが考えられたと思います。 10:1のプローブでは感度は1/10になりますが、入力抵抗は10倍に、入力容量は約1/10になるように考えられた回路です。 図7のようにプローブ先端に9MΩの抵抗を設け、直流的に10:1の減衰比を実現します。 さらに広い周波数範囲で10:1の減衰比を実現するためにこの9MΩの抵抗に並列に容量を加えます。 CpxRp=C2xRinを満たすと周波数特性が平坦になります。 この例では Cp=(C2xRin)/Rp≒11pF Cpは他の容量成分に直列に入るため、入力容量はCp以下に低減します。 これにより入力抵抗は10MΩ、入力容量は約10pFが実現します。 現物のプローブでは反射を抑えるために同軸ケーブルに抵抗線を用い、また高周波領域での補正回路が加わります。 オシロスコープの入力容量にはバラツキがあるために Cp=(C2xRin)/Rp を実現するための調整用半固定コンデンサがあります。 図7 10:1プローブの原理 図8は横河計測のオシロスコープでの補正補法ですが、他のメーカーの製品でも同様です。 図8 プローブの補正方法 補正には調整用ドライバを使います。付属のドライバを使う場合もあります。 またテクトロニクスの最近のオシロスコープではメニューから電子的に補正作業を行います。 減衰比10:1の別の理由 もちろんプローブには測定する電圧範囲を広げる目的もあります。 オシロスコープの入力感度が1目盛り当たり1mV~10Vの場合、高電圧を測ることはできません。 図9は電圧軸1目盛り当たりの感度がプローブによりどのように変化するかを表したものです。 図9 広い電圧範囲に対応する各種のプローブ 10:1のプローブでは10mV~100Vに、電源などの高電圧測定で10:1プローブでも耐圧が足りない場合は100:1、さらに放電現象観測などでは1000:1のプローブも使われます。 プローブは各メーカー専用に作られていることもありますが、一般的なBNCコネクタ、リードアウト機能で汎用的にどのメーカーのオシロスコープでも使える製品もあります。 図10はテクトロニクスの高電圧プローブですが、100:1のP5100A、1000:1のP6015Aは多くのオシロスコープと組み合わせることができます。 ただし一点、補正範囲の確認は必要です。 10:1のプローブ同様にオシロスコープのプローブ補正用信号(CAL信号 1kHzの方形波)を使い補正をかけますが、組み合わせるオシロスコープの入力容量が決められた範囲内でないと補正ができません。 この点だけは注意が必要です。 図10 テクトロニクスの高電圧プローブ また図10の負荷の項目を見ると10:1のプローブが10MΩ、並列に10pF程度ですが、減衰比の大きい高電圧プローブの入力抵抗はより大きく、入力容量はより小さくなっています。 特に100:1のプローブは数V程度の信号でも十分な振幅表示を得られますので、入力インピーダンス、特に入力抵抗値が問題になる場合には使用を検討する価値はあります。

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計測器の電源ケーブルのプラグが3ピンの理由は?

家電製品の電源ケーブルのプラグは2ピンですが、電子計測器や医療器などの工業製品は3ピンです。 違いは何でしょうか。 計測器などの業務用機器や医療機器を使うようになると、家電製品と電源プラグが異なることに気が付きます。 家電製品は2ピン、業務用機器は3ピンで真ん中のピンはグラウンドです。 図1 アメリカの壁コンセントと日本の壁コンセント アメリカのコンセントは図1の左の形で、日本の2ピンンの電源プラグもそのまま差し込めます。 このコンセント、アメリカ、日本どちらも差し込み部分の長さが少し違います。 短い方がホット、長い方がコールドと言い接続は図2のようになります。 アメリカの商用電源、電力会社のトランスの2次側はグラウンドには接続されていません。そして別に接地線(グラウンド)が配線されています。 日本の商用電源はトランスの中点が設置されています。そして一般家庭では一部を除いて接地線はコンセントまで来ていません。 図2 商用電源のグラウンドの違い もう少し詳しく屋内配線の様子を見てみましょう。 接地線の来ている洗濯機置き場のコンセントを使って電圧を測ってみました。 図3 電源極性の確認 電源極性の実測値はこのようになりました。 ホット-コールド間        102.8V グラウンド-コールド間   0.427V グラウンド-ホット間 103.1V 図4の上側が事業所、実験室の配線の様子、下側が家庭の配線の様子です。 上側では3ピンのコンセントが使われ、接続した機器のアースが自動的に取れます。 一方下側では1箇所、洗濯機置き場を除きアースは取れません。 図4 日本の100Vと200V 電子計測器などでは図5のようにノイズ対策としてAC入力部にはフィルタが内蔵されたインレットを使用しています。 このフィルタはコモンモード・チョークとコンデンサで構成されています。ホット-コールド間には直列のコンデンサがあり、その中点はシャーシに接続されます。 そのままではこの中点にコンデンサの電圧分割によりAC100Vの半分が発生しますが、シャーシは接続ケーブルのグラウンド線により接地されるのでシャーシ電位はグラウンド電位になります。 図5 計測器などで使われる電源フィルタ ところが3ピン-2ピン変換アダプタを使ってコンセントに接続するとこの電圧は逃げようがなくなります。 本来はこのアダプタ、図6のように緑色の線(グラウンド)を別に接地しなければいけないのですが、残念ながらそのような使用例は見たことがありません。 図6 正しい3ピン/2ピンアダプタの使い方 もっとも2ピンコンセントの周辺に接地線はないので当然でしょう。 一見問題なく動作しますが、複数の機器を接続するとなると話は違ってきます。 図7は二つの機器を3ピン-2ピン変換アダプタを使用した例です。 二つのプラグを同じ向きに接続していれば両方のシャーシにAC電圧が発生していてもそれらの電位差はありません。 しかし何らかの原因のより片方のプラグが逆接続されると、シャーシ間には100Vの電圧が発生することになります。 図7 グラウンドを浮かせて逆相接続 家電製品などはもともと2ピンの電源で設計されています。この場合も図8のように浮遊容量によりシャーシ(グラウンド)に電位が発生します。 図8 電源フィルタのない機器でも発生するグラウンド電位 最近多用されるスイッチング電源では電圧が低めになりますが、ACアダプタ動作のノートPCでコンセントの向きを変えて確認すると図9のようになりました。 図9 電気製品のシャーシ電位の測定例 この電圧はデジタル・マルチメータを使って測ることもできます。デジタル・マルチメータの入力インピーダンスの影響で正確な値ではないでしょうが、それでも数10Vは確認できます。 流れる電流は小さいため人体が感電することはありませんが、半導体デバイスやアクティブ・プローブを破壊するには充分なパワーがあります。 念のためプローブのグラウンドを先に接続する癖をつけましょう。先にグラウンドを接続することでシャーシ間の電位差をゼロにできます。 図10 アクティブ・プローブの破損を回避する接続順番 プローブではなく同軸ケーブルの機器間接続の場合、ほとんどはBNCコネクタなどのグラウンド側が先に接触し、大事には至らないのですが、極稀にホット側のピンが先に接触する可能性があります。 事実、時折ジェネレータの出力ドライバが壊れる事例があります。 安全上はすべての機器を接地し、シャーシ電位をゼロにすれば良いのですが、図11のようにグラウンド・ループが形成されます。 これにより微小電圧の測定では発生するノイズが問題になります。 このノイズ発生を抑えるためにあえてグラウンドを浮かせる使い方がないわけではありません。 図11 グラウンド・ループによるノイズの発生 グラウンド・ループをカットするために絶縁トランスを併用する方法があります。これには電源側から流入する雑音をカットする効果も期待できます。 サイン波を発生できる電源が市販されていますので、それを使いましょう。 図12 絶縁トランスの使用 完璧を目指すには測定器側を完全に電源から浮かすことです。 ハンディ型などのバッテリー駆動の測定器があれば完全に浮かすことができますが、商用電源駆動の場合はバッテリーで駆動するインバータ電源が使えます。 もっとも民生用のキャンプなどで使う電源は発振波形がパルスなので多くのノイズを含んでいるので使えません。 図13 バッテリー駆動の電源の使用

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ノイズを測定するには?

ノイズは機器の動作にとって大敵です。そのためノイズが設計値以下になっているかどうか確認が必要です。 特に電源ノイズは安定した動作の基本になりますが、測定ミスを起こす可能性もあるので注意が必要です。 ノイズにはいろいろな種類があります。 思いつくままに挙げてみると ● ランダム・ノイズ ● 固定パターン・ノイズ ● 飛び込みノイズ などがあります。 図1 いろいろなノイズ 熱雑音 測定器にとってノイズは大敵です。測定限度を決めてしまうからです。 ノイズが少ないことは好ましいことですが、絶対に避けられないノイズが熱雑音です。 抵抗Rが温度T(℉)にある時、周波数帯域では図2に示される実効値のノイズを発生します。 図2 熱雑音 ノイズの分布はガウス分布に近似すると言われています。 オシロスコープの場合、周波数帯域≒とすると 周波数帯域 1GHz 入力インピーダンス 50ΩではVn=28µVになります。 オシロスコープの入力インピーダンスを50Ωから1MΩに切り替えるとノイズレベルが増えるのはこのためです。 つまり増幅器のノイズは入力インピーダンスが低い方が有利になるわけです。 ところで周波数軸測定器の代表であるスペクトラム・アナライザはオシロスコープとは比較にならないほどダイナミック・レンジが広く、ノイズフロアは非常に低くなります。また分解能帯域幅を狭くするほど、ノイズが少なくなります。 オシロスコープは直流から最高周波数まで同時に取り込むため、取り込まれるノイズが大きくなります。 一方、スペクトラム・アナライザは帯域幅の狭いフィルタをスキャンして信号を取り込むため、実は非常に狭帯域の測定器です。そのためノイズが少ないのです。 図3 オシロスコープとスペクトラム・アナライザの周波数帯域の違い AC/DCスイッチング電源のノイズ 商用電源から直流電圧を作るAC/DCスイッチング電源は図4のようにAC100Vを全波整流し直流電圧に変換します。この段階で100/120Hzのリップル・ノイズが発生します。 この直流電圧はスイッチングされ昇圧/降圧後に整流されます。この段階でスイッチング・ノイズがさらに加わります。 図4 AC/DCスイッチング電源の原理 その結果、出力には図5のように ● 直流成分 ● 低周波の商用電源由来のノイズ ● 高周波のスイッチング・ノイズ がミックスされた形になります。 図5 AC/DCスイッチング電源の出力成分 図6は横河計測のオシロスコープ DLM3054(周波数帯域 500MHz)を使いUSB充電器の5V出力のノイズを初期設定のまま測定した結果です。 初期設定での波形レコード長は125kポイント、時間軸10ms/divでのサンプル・レートは1.25MS/s(0.8µs分解能)になります。 商用電源由来の低周波ノイズは捕らえられていますが、 スパイク状のノイズのピークが捕らえられていないようです。 図6 電源オン後の初期設定で測定した電源ノイズ波形 サンプル・レートをコントロールする そこで同じ10ms/divにてサンプル・レートを高めるためレコード長を50Mポイントに変更し、サンプル・レートを500MS/s(2ns時間分解能)として取り込んだ例が図7です。 スパイク状ノイズのピークも捕らえられているようです。 図7 高速サンプル・レートで取り込み直した場合 確認のためトリガ部分を50μs/divに拡大してみました。発振周波数約40kHzのスイッチング・ノイズ波形が確認できます。 図8 高速サンプルでスイッチング・ノイズを捕らえる このようにサンプル・レートを適切にコントロールすることで波形全体を捕捉することができますが、やや面倒な感は否めません。 簡単にピークを捕捉できるピーク検出 オシロスコープには波形をデータ化する高速A/D変換器が搭載されています。 A/D変換速度は設定により変化しますが中身は常に最高サンプル・レートで動作しています。 図9は最高サンプル・レートで動作した場合です。 ノイズを含めた波形の瞬時値を最高サンプル・レートでサンプリングし、記録します。 図9 通常のサンプル・モードの動作 サンプル・レートを落とした場合は図10のように読み飛ばしを行い、波形メモリに記録します。 記録されないデータは使用しません。 図10 通常のサンプル・モードでサンプル・レートを落とした場合の動作 オーバサンプリングされたデータの利用方法の一つがピーク検出です。 ピーク検出では記録区間において最高サンプル・レートで取り込めた最大値と最小値を記録します。 メーカによりエンベロープ・モードと呼ぶ場合もあります。 このモードを使うと時間軸の設定によらず最高サンプル・レートで取り込み得るピーク値を記録でき、図11のような表示になります。 もちろんスパイク状のノイズのピーク値も捕捉できます。 図11 ピーク検出(エンベロープ)の動作原理 図12はDLM3054をエンベロープ・モード(他メーカで言うところのピーク検出)で取り込んだ例です。 サンプル・レート(記録レート)は1.25MS/sですがスイッチング・ノイズが取り込まれています。 もちろん、波形データとして演算には使用できませんが、波形パラメータ測定でピークピーク値算出は可能です。 図12 ピーク検出(エンベロープ)モードでノイズのピークを検出 スイッチング・ノイズを観測する際にはプロービングに要注意 図13はスイッチング・ノイズを、標準グラウンド線を付けた付属のプローブで測定した例です。 サンプル・レートは625MS/sですが鋭いノイズピークがあります。 図13 通常のグラウンド線で測定 ここでプローブのグラウンド線を最短に変更、サンプル・レートを2倍に高めて取り込んだ例が図14です。 サンプル・レートを高めたにもかかわらずノイズピークが半減しています。 これは図15のように測定ターゲット周辺の磁界ノイズをグラウンドが作るループにより取り込まれてしまったためです。 図14 最短のグラウンド線で測定 電源モジュール・メーカの方からお聞きしましたが、不適切なプロービングにより「カタログ性能よりノイズが多い」とクレームが来ることが少なくないそうです。 プローブがアンテナになる恐れがあることにご注意ください。 図15 グラウンド線がノイズを拾うアンテナになる

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オシロスコープのFFT機能の使い方は?

信号を周波数軸で観測する計測器には高周波用のスペクトラム・アナライザや音声・振動解析に使われるFFTアナライザがありますが、オシロスコープにもFFT機能が搭載されています。オシロスコープのFFT機能はどう使ったら良いでしょうか。 人間はどのように音を聴いて認識しているのでしょうか。 図1であらためて時間領域と周波数領域を見てみましょう。 耳の内耳には有毛細胞という特定の周波数の音に共振する細胞が12,000個あるそうです。 音はいろいろな周波数の空気振動の集合で、有毛細胞は時系列で反応を脳に送って音を認識するようです。 図1 人間の聴覚 単純に方形波で考えると図2のように方形波は基本波成分と、その奇数倍の周波数の高調波から成っています。 図2を時間軸で見るとオシロスコープなどの測定器での表示、周波数軸で見るとスペクトラム・アナライザやFFTアナライザでの表示に相当します。 図2 時間軸波形と周波数軸波形の関係 さて高周波測定器の代表であるスペクトラム・アナライザはどのようにして周波数解析を行っているのでしょうか。 スペクトラム・アナライザには通過する帯域幅の狭いフィルタがあり、それを低い周波数から高い周波数までスキャンすることで波形の周波数成分を検出しています。 例えて言うと刑務所から脱走者がいないか、サーチライトでスキャンしてチェックしているイメージです。 ここで注意すべきはサーチライトが当たっていない時に脱走者がいても発見できないという事です。 スペクトラム・アナライザも同じで、フィルタがスキャンしているその瞬間にある周波数成分しかわからないということです。 高い周波数に上げる回路をアップコンバータ、下げる回路をダウンコンバータと呼ぶことがあります。 図3 掃引式スペクトラム・アナライザはサーチライトに似ている 周波数変換技術 スペクトラム・アナライザでは周波数変換技術が使われています。 三角関数の掛け算を思い浮かべてください。 図4のように周波数の異なる二つのサイン波を掛け合わせると二つの周波数の和と差の成分になります。 20kHzと21kHzの二つの信号をミキサ回路に入力すると41kHzと1kHzを得ることができます。 測定したい信号が21GHz、測定器内部の発振器の信号を20.99GHzとすると、差の0.01GHz(10MHz)に変換できます。 21GHZは非常に周波数が高くそのまま扱うことは困難ですが10MHzならば容易に扱えます。 これがスペクトラム・アナライザでの周波数変換です。 図4 ミキサによる周波数変換 周波数変換の技術は以前から高周波を扱うラジオやテレビで使われてきました。図5はアナログ時代のFM受信機の仕組みです。 入力された76.1~94.9MHzの放送波と受信機内部の発振器(65.4~84.2MHz)の信号はミキサで引き算されます。そして10.7MHz±100kHzを通すフィルタを通り検波され音声信号になります。 発振器の周波数を選ぶことで特定の周波数の放送を受信できるわけです。 図5 アナログ時代のFM受信機 受信機では内部の発振器の発振周波数は一旦選局すれば固定ですが、スペクトラム・アナライザでは図6のように一定の速度で変化させます。 FM受信機で言えば選局を続けて変えて行く感じです。 そして帯域フィルタを通過した信号を検出します。 このようにスペクトラム・アナライザは測定する信号は高周波ですが、巧妙に低周波に変換して解析を行います。 解析する周波数の範囲はフィルタの周波数帯域幅なので含まれるノイズレベルは非常に低くなり、低レベルの信号も検出できます。 つまりスペクトラム・アナライザは定常的な信号の周波数成分を高い周波数分解能、広いダイナミックレンジで測定できる測定器です。 図6 掃引式スペクトラム・アナライザの基本原理 FFTの原理 デジタル技術を使った周波数解析がFFT(高速フーリエ変換)です。 入力信号はA/D変換器にてオシロスコープのようにサンプリングされます(離散データ)。 データ・ポイント数は2N、1024、2048・・・になります。 ここでデータの最初と最後を結んでリング状にして繰り返し信号上に解析しますが、最初と最後の値が一致しないと段差を生じ誤差の原因になります。 このため0⇒1⇒0と変換する窓関数を掛け一致させます。 解析結果は振幅データと位相データになりますが、データ・ポイント数はそれぞれ元データの1/2になります。 周波数上限はサンプル・レートの1/2 周波数分解能はサンプル・レート÷データ・ポイント数 になります。 周波数分解能を上げ細かい周波数変化を見るためにはサンプル・レートを下げるかデータ数を多くすることになります。 しかしサンプル・レートを下げると解析上限周波数が低下します。 データ数を多くすると解析する演算時間が大幅に増えてしまいますので、適切な設定が必要です。 図7 FFTの原理 写真1は代表的なFFTアナライザです。 製品化されたFFTアナライザは解析する対象として音声信号や振動、メカ的な動きがメインになります。 入力周波数上限は100kHz以下が多く、逆に入力レンジは24ビットA/D変換器の採用で120dB(100万倍)以上と非常に広くなります。 120dBという値は人間の聴力とほぼ同等といえるでしょう。 写真1 代表的なFFTアナライザ 一方、図8のように、オシロスコープでは8ビットA/D変換器が主流、中上級機で12ビットが採用され始めたところです。 そのため入力のダイナミックレンジは広くありませんが、扱う周波数がオシロスコープより低いレコーダでは12~16ビットA/D変換器が採用されています。 このように扱える周波数(最高サンプル・レート)とダイナミックレンジはトレードオフの関係があります。 オシロスコープのダイナミックレンジは狭いですが、ほぼ周波数帯域(正確さを期するならば周波数帯域の30%程度)までの周波数解析が可能です。 図8 計測器の住み分け オシロスコープでのFFT演算においては標本化定理を厳密に守ることが必要です。オシロスコープでは時間軸の設定によりサンプリング周波数が大きく低下し、標本化定理を満足しないことが起き得るからです。 標本化定理では信号の周波数成分が図9上のようにナイキスト周波数(サンプル・レートの1/2)以下に収まる必要があります。ナイキスト周波数とサンプル・レートの間に折り返し成分が存在するからです。 もしもナイキスト周波数を超える周波数成分があると、折り返し成分が本来の周波数成分に重なってしまい、本来存在しないスペクトラムが表示されてしまいます。 図8 計測器の住み分け オシロスコープでのFFT演算においては標本化定理を厳密に守ることが必要です。オシロスコープでは時間軸の設定によりサンプリング周波数が大きく低下し、標本化定理を満足しないことが起き得るからです。 標本化定理では信号の周波数成分が図9上のようにナイキスト周波数(サンプル・レートの1/2)以下に収まる必要があります。ナイキスト周波数とサンプル・レートの間に折り返し成分が存在するからです。 もしもナイキスト周波数を超える周波数成分があると、折り返し成分が本来の周波数成分に重なってしまい、本来存在しないスペクトラムが表示されてしまいます。 図9 標本化定理で起きるエラー 図10はワンボードUSB測定器で取り込んだサイン波のFFT表示です。 ● サンプル周波数(サンプル・レート) 40kHz(40kS/s) ● データ・ポイント数 8192 ● 信号周波数 1kHz 振幅 1V(0.707Vrms) FFT上限周波数は40kHzの1/2、20kHzになります。 オシロスコープの表示では振幅は±1V、実効値は0.707Vになります。 FFT表示では1kHzのポイントにスペクトラムが確認できレベルは-3dBVになります。 スペクトラム・アナライザやFFTでは広い電圧範囲を表示するために縦軸はLog表示が一般的です。 高周波用スペクトラム・アナライザでは50ΩインピーダンスでdBm(1mWが0dBm)が、FFTアナライザ、オシロスコープのFFTではdBVが一般的です。 dBVでは実効値1Vが0dBVになります。 図10 FFTによる周波数・振幅表示 FFTでも周波数軸でのズーム拡大が可能です。 図11ではDC~2kHzまでの表示にしてみました。 周波数分解能は40kHZ÷8192=4.88Hzになります。 図11 表示拡大により詳細に解析 FFT解析では信号は繰り返しである必要はありません。単発信号でも解析可能です。 周波数解析をすることで時間軸では分かりにくいことが簡単に理解できます。 例えば電源に乗るノイズを周波数解析、ノイズの周波数成分が分かれば対策のヒントを得ることができます。

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ファンクション・ジェネレータの接続方法

サイン波、パルス波のようなシンプルな波形から変調波、さらにオシロスコープで取り込んだ波形を再現、また任意波形発生器としても使えるファンクション・ジェネレータは実信号を得られないときに疑似信号として使える便利で手頃な計測器です。扱える周波数があまり高くないため、高速のパルス・ジェネレータのように厳密な接続は要求されませんが、負荷への接続に対する理解は大切です。 代表的なファンクション・ジェネレータとしてエヌエフ回路設計ブロックのWF1974を例に接続方法を考えてみましょう。データシートの出力特性の項を見ると図1の記載があります。 図10 波として考えたエンド終端での動作 図1 エヌエフ回路設計ブロック WF1974の出力特性 (データシートより抜粋) 振幅の設定範囲の項には ●出力を開放、つまり現実的には50Ωより非常に大きな負荷を接続した場合はピーク値で最高20V ●出力を50Ωで終端した場合は半分の最高10V とあります。 このことから出力インピーダンスは計測用信号発生器のスタンダードとも言える50Ωであることがわかります。 ここではファンクション(波形)出力端子のグラウンドについて記載しています。 図2 エヌエフ回路設計ブロック WF1974の出力端子のグラウンド (マニュアルより抜粋、作成) これによると、図3のようにCH1、CH2のグラウンド(BNCコネクタの外側)はシャーシ・グラウンドから絶縁されている、さらにCH1、CH2のグラウンドもそれぞれ独立していることを示しています。 これにより(42Vまでであれば)両チャンネルともに別々のポイントを基準点として使えることになり、接続の自由度が高く、ノイズに対しても優位と言えるでしょう。 図3 出力コネクタのグラウンドは独立 別の製品としてキーサイト・テクノロジーの33522Bを確認してみます。図4はデータシートからの抜粋です。 出力振幅はエヌエフ回路設計ブロック、WF1974と同等で ●50Ω負荷では1mVpp~10Vpp ●オープン(開放)では2mV~20Vpp また出力インピーダンスは50Ωと記載されています。 図4 キーサイト・テクノロジー 33522Bの出力特性 (データシートより抜粋、作成) ただしアイソレーションの項を見ると、図5のようにグラウンドはシャーシ・グラウンドからは絶縁されていますが、CH1、CH2のグラウンドは共通と思われます。多くの場合、問題は無いと思われますが、両チャンネルのグラウンドを別々に取ることはできませんので、その点は注意が必要です。 図5 キーサイト・テクノロジー 33522Bの出力 さてデータシートには負荷抵抗として50Ωと開放(オープン)がありますが、ぞれぞれの意味するところを考察してみましょう。 キーサイト・テクノロジー 33522Bを例にすると(エヌエフ回路設計ブロック WF1974も同じ)図6のようになります。接続には反射の悪影響を考慮して伝送インピーダンス 50Ωの同軸ケーブルを使います。 図6 50Ω終端と解放の違い オシロスコープで観測する場合を考えると、入力インピーダンスは1MΩ/50Ω切り替えになり、1MΩ時ではほぼ開放と言えます。 図7 オシロスコープの入力インピーダンスを1MΩにした場合 この場合、図8のように出力インピーダンス50Ωの信号源から出力された信号は50Ω同軸ケーブルに達した瞬間に電圧振幅は抵抗分割で1/2になります。この信号が同軸ケーブルを伝わり、インピーダンス無限大(開放)の終端部に達するとプラス方向に全反射を起こし、電圧振幅は2倍、つまり出力時のレベルになります。直流的に考えると、負荷抵抗が無限大なので出力振幅は変わらずにそのまま伝わると考えることができますが、波としてはこのように考えられます。 図8 波として考えた解放終端での動作 負荷抵抗が50Ωの場合はどうなるでしょうか。 図9 オシロスコープの入力インピーダンスを50Ωにした場合 図10のように信号が負荷抵抗に達すると反射波起こらず、負荷抵抗にすべて吸収されます。つまり出力端に現れる信号振幅は出力の1/2になります。 図10 波として考えたエンド終端での動作 勿論、直流的に同軸ケーブルを省いて考えると出力インピーダンスと負荷抵抗により信号振幅は1/2になると考えることもできます。 ケーブルのインピーダンスに注意 計測器や業務機器で使われる同軸ケーブルには2種類あります。計測器の接続にはほぼ50Ωが使われますが、テレビ放送機器、デジタル・オーディオでは75Ωです。50Ωの同軸ケーブルは3D-2V、5D-2V、75Ωは3C-2V、5C-2Vなどが多く使われ、「D」は50Ω、「C」は75Ωを示します。ところがケーブル本体には「50Ω」、「75Ω」と表示されているとは限りません。 図11のようにうっかりと75Ω同軸ケーブルを使ってしまうケースが起こります。図11では50Ωで終端したつもりですが、どうなるでしょうか。 図11 接続に75Ωの同軸ケーブルを使ってしまうと この場合、ファンクション・ジェネレータの出力端子⇔同軸ケーブルの間でインピーダンスの不整合が起こります。勿論、受信端では同軸ケーブル(75Ω)⇔50Ω負荷でマイナスの反射が起こり、反射波がファンクション・ジェネレータまで戻ってきます。そして出力端子にて今度はマイナス方向に反射が起こり、反転した反射波が受信端に戻ります。図12でシミュレーション結果と実験結果を示しますが、出力では大きな歪みが起っていることが確認できます。 図12 接続に75Ωの同軸ケーブルを使った場合の波形 では図13のように終端を開放にすれば良いでしょうか。 図13 接続に75Ωの同軸ケーブルを使って解放終端で使うと この場合も歪みは減りますが図14のように反射の影響が見られます。 図14 接続に75Ωの同軸ケーブルを使い解放終端した場合の波形 同軸ケーブルによく似たケーブルにシールド線がありますが、伝送インピーダンスはわかりません。低周波の場合は反射が起っても波長が長いため、線路の影響が確認できないだけです。計測器には必ず合ったケーブルを使用しましょう。

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