物理の勉強では「剛体」という変形しない物体を想定しますが、現実の物体は外から力を加えると変形します 。この変形のことを「ひずみ」と言います。「ひずみ」と言うと電気の世界では波形歪、音声の計測では高調波歪や混変調歪など を言いますが、これらは物体の「ひずみ」とは別の概念です。物体のひずみには、図1のように一定の変形を保つ静的なひずみだけでなく、図2のようなエンジンやモータの振動のように、変形しにくい鉄のボディを揺らす動的なひずみがあります。何らかの方法でひずみを電気信号に変換すれば、静的なひずみは直流として、動的なひずみは交流として扱えます。図1 静的なひずみ図2 動的なひずみ図3のように、物体に圧縮の力を加えると物体は収縮します。逆に引っ張る力が加わると伸長します。図3 外力による物体の変形この圧縮・伸長を数値化したものが図4です。線長Lの導線が圧縮・伸長により⊿L変形した場合、ひずみをと定義します。圧縮・伸長により導体の線長が縮小・延長し、合わせて断面積が増加・減少します。これにより圧縮時には導線の抵抗値が増加、伸長時には低下します。図4 ひずみの定義と抵抗の変化図5はひずみを検出するひずみゲージで、被測定対象に接着剤で取り付けます。図5 ひずみゲージの装着ひずみゲージは図6のように折り返された導線で構成されており、各寸法はひずみゲージの仕様書に記載されています。ひずみがない場合の抵抗値Rは圧縮時にR-⊿R、伸長時にはR+⊿Rに変化します。図6 圧縮・伸長で変わる抵抗値ここでひずみεはと定義されR、⊿Rから算出できます。ここでKはゲージ率と呼ばれ、ひずみゲージに記載されています。検出される抵抗の変化は非常に小さいため、何らかの方法で電圧に変化しなければなりません。図7はホイートストン・ブリッジの原理です。a点とb点の電位が等しい場合にa-b間に電流は流れません。図7 ホイートストン・ブリッジの原理この条件は
よりになります。ここで図8のようにR1=R+⊿R(ひずみゲージ)R2=R3=R4=Rと単純化するとa-b間の電位差⊿eはになり、抵抗の変化分は非常に小さいと考えられるためとなり電圧の変化から抵抗変化が分かり、抵抗変化に比例するひずみの値が算出できます。図8 ひずみの算出法ひずみ測定器は図9のようにひずみゲージ、近傍に配置するブリッジヘッド、接続用延長ケーブル、レコーダ本体に取り付けたひずみ用モジュールで構成されます。図9 ひずみ測定器の原理ひずみゲージの抵抗値は120Ω/350Ω/1kΩが一般的で、市販されているひずみゲージ用入力ユニットにてゲージ抵抗値、ゲージ率を設定します。図10はデータレコーダと組み合わせる代表的なひずみ用モジュールです。図10 代表的なひずみゲージ用モジュール