オシロスコープでは波形の表示位置を上下に動かすことができます。一部では「オフセット」のみの製品もありますが、多くの製品には● 垂直ポジション● オフセットの二つがあります。この二つの動作は全く異なります。垂直ポジションはグラウンド(リファレンス)レベルを含めて上下に移動します。オフセットは信号に直流バイアスを加えます。USB充電器の出力、直流5Vに乗るノイズ、電圧変動を例に動作を確認しましょう。定常的ノイズの観測図1では直流レベルとノイズ全体を観測するために電圧感度を2V/divに設定しました。センターのゼロレベルより2.5目盛り上に直流5Vが表示されるとともにノイズ成分も若干表示されています。図1 ACカップルで直流電圧を確認ノイズ成分を拡大するために電圧感度を上げると図2のように波形全体が画面外に移動してしまい確認することはできません。図2 5Vラインに重畳するノイズは単純に電圧感度を上げても観測できない今回の測定では直流5Vを見る必要はなく、余計な存在です。そこで図3のように入力カップルをデフォルトのDC(直流)結合からAC(交流)結合に変えます。AC結合 では信号に直列にキャパシタが入るために直流成分は通過しなくなり、交流成分のみ観測できます。その上で、電圧感度を自由に設定できます。図3 直流成分をカットするAC結合図4はAC結合にて電圧感度を100倍の20mV/divに高めた例です。低周波と高周波のノイズが確認できます。(今回の測定ではサンプル・レートが1.25MS/sと遅いため、高周波ノイズのピークレベルが低下している恐れがあります。解決策は別の機会に解説します。)図4 入力カップルをAC結合に変更、電圧感度を高くする電圧変動の観測負荷変動による電源電圧が変動の場合、電源の電圧復帰性能の評価はAC結合では行えません。AC結合では図5のように直流をカットするキャパシタと入力抵抗によりCR回路を形成するために、入力波形が微分されてしまいます。図5 AC結合では入力信号が微分される図6はAC結合で電圧変動を観測した例です。0.5秒ほどで元に戻ってしまいます。図6 AC結合では波形が微分されてしまい、正しく観測できないオフセット機能は入力結合をDC結合で行います。オフセット電圧は増幅器に加わり、入力波形の直流レベルが変化します。図7では5Vのオフセット電圧により電源信号の5Vレベルをゼロレベルに変換、そして電圧感度を上げることで電圧変動を詳しく観測できます。図7 オフセットの働き図8は5Vのオフセットをかけ、電圧感度を20mV/divに上げた例です。直流電位の変化が確実に観測できています。図8 オフセット電圧の活用により、電圧方向の任意の部分を拡大観測できるオフセット機能は図9のように電圧方向の任意の部分を切り出して取り込むことができます。オフセット電圧には有効な範囲があり、その範囲であれば制限なく使用できます。またアクティブプローブにも同様のオフセット機能が搭載されています。図9 オフセット機能の概念