ロジック入力付きオシロスコープの性能と使い方選び方

最近のオシロスコープは4チャンネル、ないしそれ以上のアナログ入力を持つ製品が多くあります。さらにオプションでロジック入力を追加できるミックスド・シグナル・オシロスコープ(MSO)と呼ばれる製品がほとんどです。オシロスコープのロジック入力の性能、そして使い方について解説します。

代表的なミックスド・シグナル・オシロスコープ
写真1は各社の代表的なミックスド・シグナル・オシロスコープです。周波数帯域500MHz~1GHzの製品を中心にラインナップされており、特に組込機器の検証で便利に使うことを目指していると思います。

ロジック入力には専用のプローブを使用します。ロジック・プローブの入力部は初めから装備されている製品、オプションで装備される製品があり、後々にロジック入力を追加する場合は注意が必要です。

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写真1 代表的なロジック入力付きオシロスコープ

ロジック入力の動作
オシロスコープのアナログ入力は信号をアナログ信号として評価するために使います。アナログ信号をそのままサンプリング、A/D変換され多くは8~12ビットのデータとしてメモリに記憶されます。
ロジック回路、特にマイクロ・プロセッサが活用され始めた1970年代、多くのチャンネルのロジック信号を解析するために計測器各社よりロジック・アナライザが発売されました。
ロジックの符号を判別するためにスレッショルド電圧より上か下かを判別します。
当時のオシロスコープの主流が2チャンネルであったこともあり、多チャンネル化、高速化、疑似信号源としてのロジックパターン・ジェネレータ付き、さらにオシロスコープ機能付きと発展しました。

現在ではベースバンドにおいてロジック信号を観測する需要は低下したこともあり、通信プロトコルを解析するなどの機能に特化した製品になっています。

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図1 ロジック入力の様子

今日ではI2CやSPIなどの比較的速度の速くない、つまり信号品質を確認するまでもない信号を他のアナログ信号と同時に確認する、またデコーダの信号などの観測を容易にする目的で図1のようなロジック入力が使われています。
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図2 ロジック信号の取り込み関する性能

ミックスド・シグナル・オシロスコープの種類
ミックスド・シグナル・オシロスコープの回路構成は大きく分けて2つあります。ひとつは図3のようにアナログ入力とは独立したロジック入力を持つ製品です。

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図3アナログ入力+ロジック入力の製品

内部構成は図4のようにオシロスコープとは独立した波形メモリを持ちます。そのためアナログ入力数を減らすことなくロジック入力を使うことができます。ただし一部にはロジック入力使用時にはメモリの一部をロジック用に転用する製品があり、データシートでの確認が必要です。

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図4 ミックスド・シグナル・オシロスコープの内部構造イメージ

もうひとつは特定チャンネルの波形メモリを完全にロジック用に切り替える方法です。

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図5 最近増えてきたアナログ入力とロジック入力を切り換えるタイプ

アナログ用の波形メモリは8~12ビットのバス幅を持つため、そのまま切り替えるアイデアです。任意のチャネルをロジック用に使える製品と、特定のチャンネルのみロジック用に使える製品があります。

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図6 切り替えタイプのミックスド・シグナル・オシロスコープの構造イメージ

ロジック入力の電気的性能
各社のロジック入力は性能に応じた使い方があるようです。

・キーサイト・テクノロジー MSOX4000Aシリーズ
ロジック・プローブの入力抵抗100KΩ、入力容量8pFとアナログ入力の付属プローブ(10MΩ 9.5pF)と同等の入力容量の設計。
ロジック・チャンネルの最高サンプル・レートは1.25GS/sアナログ・チャンネルの1/2、レコード長も1/2と記録時間は同じです。同じ信号を別のチャンネルで取り込んだ場合、理想的には同じタイミング表示になりますが、スキューは2nsになります。
タイミング確度は必ずしも高くはありませんが、I2CやSPIの取り込み&解析には問題無く使えると思われます。

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図7 キーサイト・テクノロジー MSOX4000Aシリーズの概要

・テクトロニクス MDO4000Cシリーズ
ロジック・プローブの入力抵抗100KΩ、入力容量3pFとアナログ入力の付属プローブ(10MΩ 3.9pF)と同等の入力容量の設計。ロジック・チャンネルの最高サンプル・レートは500MS/sと速くない一方、トリガ・ポイント周辺のみ16.5GS/sの高速サンプル・レートで別メモリに記録します。同じ信号を別のチャンネルで取り込んだ場合のスキューは200psに抑えられています。これらの点から、ロジック回路のハード解析も視野に入れた製品と思われます。

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図8 テクトロニクス MDO4000Cシリーズの概要

・テクトロニクス MSO4シリーズ
MDO4000Cが初代登場から10数年経ち、新設計となったミドルクラスのオシロスコープです。専用のロジック入力ではなく、最高6チャンネルまでの入力すべてがアナログ入力とロジック入力を兼用しています。チャンネル毎にロジック入力は8チャンネルになるため、例えば6チャンネル・モデルでは

 

アナログ入力数

ロジック入力数

6チャンネル

0チャンネル

5チャンネル

8チャンネル

4チャンネル

16チャンネル

3チャンネル

24チャンネル

2チャンネル

32チャンネル

1チャンネル

40チャンネル

0チャンネル

48チャンネル

これらを選択できます。
電気的性能としてはMDO4000Cシリーズ同等、ロジック回路のハード解析も視野に入れた製品と思われます。

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図9 テクトロニクス MSO4シリーズの概要

・横河計測 DLM3000シリーズ
ロジック・プローブの入力抵抗100KΩ、入力容量3pFの設計です。
ロジック・チャンネルの最高サンプル・レートはアナログ・チャンネルの1/2の1.25GS/s。チャンネル間スキューは記載がありませんがI2CやSPIの取り込み&解析には問題無く使えると思われます。

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図10 横河計測 DLM3000シリーズの概要

ロジック・チャンネルの有効活用として、I2C、SPIなど各種シリアルバスへのトリガ、デコードが用意されており、組込機器の動作解析には大変有効なツールになりますので是非とも活用していただきたいと思います。