電子機器の動作を支える影の立役者は電源回路です。負荷で消費される電力は電源の動作状況で大きく変化するため、電源は変化に十分に対応できる能力、マージンが求められることは言うまでもありません。電源の動作を検証するには、適切な負荷を接続し流れる出力電圧・電流を測定する必要があります。そのために定量的に電源の動作を検証できる負荷が求められます。電源の動作の検証に用いるのが一番容易な負荷は、抵抗負荷です。抵抗値は固定なので、電流を変化させる場合には複数個の抵抗を準備し交換します。消費電力が大きい場合には巻き線抵抗などで作られた筒状の抵抗負荷を使用します。電流値を連続的に変化させることはできませんが、比較的安価に検証を行えます。定電圧電源の場合、図1のように出力電圧、出力電流を測定することで電源の内部抵抗、電力供給能力が求まります。図1 定抵抗によるDC特性の評価出力電流を連続的に変化させる場合には可変の抵抗負荷が必要になりますが、大電力に対応できる可変抵抗は現実的ではありません。また、可変抵抗を操作しながら電圧値・電流値をモニタすることになりますが、負荷の瞬間的な変化に対応することはできません。図2 可変抵抗によるDC特性の評価そこで、直流電子負荷を用いることにより任意の負荷状態を実現できます。電子負荷に流れる(吸い込まれる)電流は検出用抵抗で電圧に変換され、設定した電流になるようにフィードバック制御が行なわれます。図3 電子負荷の内部構造直流電源として多くの製品でバッテリが使われていますが、その検証では電子負荷が威力を発揮します。一定電流で放電した場合、バッテリの出力電圧は図4のように低下します 。図4 バッテリの放電放電開始時に電圧がやや低下後、ほぼ一定の電圧を保持、放電終了直前に大幅に電圧が低下します。出力電力は出力電圧×(一定)電流電池の容量は電流×放電時間で表されます。この試験では定電流放電で行いますので定抵抗負荷では行えません。電子負荷であれば定電流モードにより、放電開始時から終了時まで一定の電流を流しながら、同時に出力電圧の測定も行えます。図5 定電流放電で行われる放電試験さらに、外部から制御可能な直流電源(プログラマブル電源)を併用することで、図6のようにバッテリの充電・放電試験を自動的に行えます。プログラマブル電源では内部で出力電圧・電流の実測も可能なので、出力電力の測定が行えます。また、電圧・電流測定ではデジタル・マルチメータを併用すれば、より高い測定確度を得られます。図6 バッテリの充放電試験電子負荷では4つの動作モードが選択できます。1.定電圧モード設定された電圧を維持できるように電流を流し込みます。図7 定電圧モード2.定電流モード入力電圧に関係なく、設定された電流を引き込みます。電源に何らかの電圧変動が生じても、常に設定した一定の電流を引きこみます。図8 定電流モード3.定電力モード入力電圧を検出し、設定した電力を維持するよう必要な電流を引き込みます。図9 定電力モード4.定抵抗モード入力電圧を検出し、比例する電流を引き込みます。これによりあたかも定抵抗負荷のように動作します。図10 定抵抗モード電源の評価では一定の動作状態だけでなく、変化した場合の挙動評価も可能です。図11のように、電子負荷では定電流モードを可変モードに設定し、吸い込む電流を急激に変化することができます。