計測とトリガ その3

計測とトリガ。今回はその3です。図1のように信号に含まれるノイズが多い場合には、安定したトリガが得られない場合があります。これは、ノイズの影響によりトリガ・ポイントが左右にずれる、トリガ・スロープが反転する現象が起こるためです。
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図1 ノイズによる不安定なトリガ

安定したトリガを得るために、多くのオシロスコープにはノイズ成分を抑制するためのトリガ・フィルタや、小さな変化を無視するヒステリシス機能が備えられています。

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図2 ノイズの影響を低減する機能

単純な繰り返し信号以外ではエッジ・トリガでは対応できないケースが少なくないために、オシロスコープには拡張トリガ機能が装備されています。代表的なトリガがパルス幅トリガです。

図3はパルス幅トリガで設定した時間幅より狭いパルスを検出する例です。これによりグリッチと呼ばれるタイミング・エラーにより発生するエラー信号を検出できます。

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図3 幅の狭いパルスを見つける方法

図4は逆に設定した時間幅より広いパルスを検出する例です。

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図4 幅の広いパルスを見つける方法

これを応用することで、図5のように時間幅をもって送られるパルス列の先頭を検出することができます。

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図5 パルス幅トリガの応用例

また、電圧方向にエリアを設定するラント・トリガは、バスの競合により発生する、ハイでもなくローでもない信号を検出することができます。

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図6 ラント・トリガ

さらに、信号がなくなった状態を検出できるタイムアウト・トリガでは、システム停止前後を検出できます。

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図7 動作停止を検出できるタイムアウト・トリガの例

これらのエラーをトリガとし、ほかのチャンネルで疑わしい箇所を観測することでトラブルシューティングの効率を高めることが期待できます。

また、I2C、SPI、CANなどの制御用シリアルバスのトリガ、デコード機能もほとんどのオシロスコープで搭載できるようになっています。

 バス解析では長時間記録が必要になるため、波形メモリ長が十分であるか確認しましょう。また、バス信号をアナログ波形として観測する必要がない場合には、アナログ入力をほかの信号観測に使用できるロジック入力付きのミックスドシグナル・オシロスコープが便利です。

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図8 I2Cのトリガ/デコード例