計測器の校正とは

業務で計測器を使っていると「校正」という言葉を聞いたことがあると思います。計測器に「校正期限 〇〇年××月」というシールが貼られているのを見たことがあるかもしれません。校正とは何なのか、校正の大切さと計測確度を維持するための工夫を解説します。

トレーサビリティ(Traceability)という言葉があります。
トレース(Trace)は「・・・の跡をたどる、追跡する、さかのぼって調べる」という意味です。
Abilityがついて「追跡力、追跡可能性」という意味になります。

計測器について言うと「確度の保証がどのようにされているか」ということでしょうか。
オリックス・レンテックでは、校正受託業務を行っており、図1での認定事業者にあたります。
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図1 計測器の確度保証行うものとするトレーサビリティ

校正する場合、「トレーサビリティ・チャート」、「トレーサビリティ証明書」が必要という事がありますが、世界標準にどのようにつながっているかを証明するものです。

校正期間は1年とすることが多いと思います。では校正すれば今後1年間は確度が保証されるのでしょうか。答えは何とも言えません。

図2の上のように校正を行い、次の校正時に問題が無かったとして、その間確度が保証されるわけではありません。何らかの故障が一瞬だけ起こったかもしれません。接触不良ではあり得る話です。経時変化で1週間だけ確度を逸脱したかもしれません。しかし定期的に校正を実施することで、確度は確かだった可能性が高いとは言えるでしょう。
使用中に故障が起こるかもしれません。エラーが表示される、明らかに動作がおかしい場合は故障を疑いますが、例えばオシロスコープのあるチャンネルだけ電圧感度が落ちても気づかずに使い続けることは無いとは言えません。また、経時変化で確度が劣化することもあるでしょう。
これらの不良が次回校正で明らかになると、不良がいつ発生したのかは判りませんので、前回の校正以降の計測結果は信用できないことになります。
このように考えると安心して計測できないことになりますが、計測結果の確実性を高めるためには別の計測器も併用して計測結果の妥当性を良いと思います。

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図2 校正を実施したからといってもいつでも確度が保証されるわけではない

また大切な計測の前には自分で確度を確認することもできます。トレーサビリティは得られないかもしれませんが、少なくとも故障や経時変化を見つける手段にはなり得ます。

オシロスコープの電圧確度を例に説明します。オシロスコープの内部は図3のようになっています。各チャンネルにはA/D変換器に適切な信号レベルにするための減衰器/増幅器があり、この部分のゲインが電圧確度を左右します。
(厳密にいえばA/D変換器のリニアリティもありますが、補正はメーカーが内部キャリブレーションで行っていると思われます)