3チャンネル以上のファンクション・ジェネレータが欲しい

いろいろな形状のアナログ信号を簡単に出力できるファンクション・ジェネレータは、大変便利な計測器です。
市販製品のほとんどは1チャンネル、または2チャンネル出力です。3チャンネル以上が必要な場合、一部のメーカーより市販されていますが、対応できる製品は限られているのが現状です。

写真1は数少ない4チャンネル・ファンクション・ジェネレータです。

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写真1 4チャンネル出力のファンクション・ジェネレータ

そこで多くのチャンネル数が必要な場合は、複数台のファンクション・ジェネレータを並列運転するというアイデアがあります。

図1は2台の2チャンネル・ファンクション・ジェネレータを並列運転するアイデアです。2台を待ち受け状態にした後に外部トリガでスタートすれば良いように思われますが、実際にはうまくいきません。2台のファンクション・ジェネレータはそれぞれ別の時間基準(内部クロック)で動作しているために、微妙に周波数が異なり、同期していません。時間が経つに従い位相がずれてしまいます。

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図1 単純な並列ではうまく動作しない

図2がファンクション・ジェネレータの原理図です。ファンクション・ジェネレータの心臓部はDDS(Direct Digital Synthesizer)と呼ばれる発振回路です。発振周波数に基づいて波形メモリから波形データを逐一取り出し、D/A変換、アナログ・フィルタ、増幅器を経て出力されます。

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図2 ファンクション・ジェネレータの内部構造のイメージ

波形メモリには基本波形として
●サイン
●ランプ
●パルス
● 方形波
の他に、SinX/X、ランダムノイズ、ガウシャン波形などの波形データが入っています。

さらに専用アプリやExcelなどで作成した波形データも利用できます。また、オシロスコープで取り込んだ波形データを活用し、サンプル・レートの制限はありますが波形を再現することも可能です。
動作をコントロールする制御回路は、動作クロックとして外部リファレンス信号を使うことができます。また動作を開始する外部トリガ信号を使うことができます。
これらの機能を駆使して、複数台のファンクション・ジェネレータの同期運転が可能になる製品があります。

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写真2 連結運転のできる代表的なファンクション・ジェネレータ

図3はテクトロニクスのファンクション・ジェネレータの例です。1台をマスターとして、他をスレーブとします。動作クロックを共通にして同期させるために同軸ケーブルで以下の接続にします。
   
●マスターのリファレンス出力 → スレーブのリファレンス入力に接続
●動作開始のタイミングを合わせるために、マスターのトリガ出力 → スレーブのトリガ入力に接続

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図3 テクトロニクスのファンクション・ジェネレータの同期運転

あとは同期運転のメニューから設定を行えば4チャンネルの同期運転が可能です。

エヌエフ回路設計のファンクション・ジェネレータの場合は、リファレンス出力信号に同期運転のための信号が含まれているようで、接続はケーブル1本で可能です。

図4のようにリファレンス出力をリファレンス入力に接続し、同じく同期運転の設定を行います。

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図4 エヌエフ回路設計ブロックのファンクション・ジェネレータの接続方

この接続はエンド・ターミネーションを行わないバック・ターミネーションですが、10MHzのリファレンス信号であれば図5のように波形歪の問題はありません。

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図5 10MHz方形波をバック・ターミネーションで接続した場合の波形シミュレーション

図4の接続はシンプルですが2つの時間遅れ要因があります。
● 接続ケーブルの伝搬遅延 同軸ケーブル 1mあたり5ns
● 機器内部での遅延時間が数10ns

サンプル周波数が高くなると無視できないことになります。そこで時間遅延を少なくするには図6の接続を行います。

Tコネクタが必要ですが、時間遅れは同軸ケーブルの伝搬遅延5nsだけになります。この場合は縁端に50オームの終端抵抗(ターミネーション)を接続します。

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図6 エンド・ターミネーションで接続

図7は図6の接続で4台の同期運転を行った時のリファレンスの時間ずれです。縁端に進むほど波形に歪が出てきますが、問題は少ないと思われます。

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図7 4台接続した場合の時間ずれ

このように同じ型名のファンクション・ジェネレータであれば、複数台の同期運転が可能な場合があります。もちろん不可能な製品もありますが、3チャンネル以上が必要な場合は、レンタルを利用して検証を進めることも可能です。