音声、画像データがアナログの時代、信号は正弦波、および高調波の集合として扱われてきました。
NTSC規格のテレビ信号は3.58MHzのサブキャリアと呼ばれるカラー信号の振幅と位相を変化させた色信号と輝度信号を混ぜたコンポジット信号で、輝度信号の周波数帯域は4.2MHz、音声信号まで含めて6MHzでした。
現在のデジタル動画に比べると極めて狭い周波数帯域といえます。
図1はテレビ信号専用のオシロスコープである波形モニタで観測したテスト信号と実際の映像信号の例です。
非常に複雑な信号であることがわかります。
図1 NTSC信号の例
アナログのテレビ信号は非常に巧妙に作られていました。
初期のテレビ放送はモノクロ放送、信号は明るさの情報(Y信号)と音声のみでしたが、互換性を保ちつつ色情報を乗せるために図2のように色情報をサブキャリアに乗せて送る方法が採用されました。
垂直同期周波数、水平同期周波数、サブキャリア周波数は互換性を保つために設定されました。
現在では使われなくなった技術ですが、アナログ技術の一つの極みであり、興味のある方は一度調べてみると良いでしょう。
図2 NTSC方式の概念図
デジタル放送の時代になり、画素数はNTSC同様のSDTVで640×480、BS放送によるHDTVは1920×1080、4Kでは3840×2048と飛躍的に情報量が増えました。
これらはすべてパルス波で作られています。
最初にデジタル化されたSDTV(いわゆるDVD画像)では270Mbpsでしたが、現在普及しているHDMI1.4(4K対応)では10.2Gbps(3.4Gbps×3レーン)と民生品とは思えないほど高速データ伝送を実現しています。
パルス信号の定義
図3では歪のない正弦波とパルス波を定性的に表現するパラメータを示します。
テスト信号を発生するにはジェネレータを使用し、必要な波形パラメータを設定します。
正弦波の場合は
● 周波数(周期の逆数)
● 振幅
● オフセット
になります。
複数チャンネルの場合は位相が追加されます。
パルス波の場合はやや複雑で
電圧方向
● 振幅
● オフセット
(トップ、ベース電圧を設定する場合もあり)
時間方向
● 周期(周波数)
● パルス幅(またはデューティ比)
● 立上り/立下り時間
複数チャンネルの場合は位相または時間遅延が追加されます。
図3 正弦波とパルス波の波形パラメータ
さて正弦波とパルス波を周波数軸で比較すると図4のように大きな差があります。
歪のない正弦波の場合、周波数成分は一つだけです。
この一つの周波数成分ですが、高周波の領域では周波数の確度と安定度が信号の評価になります。
周波数が不安定な場合、図4のように周波数スペクトラムは広がり、これを残留FMと呼び、スペクトラム・アナライザで測定します。
もちろんスペクトラム・アナライザ内部の発振器に不安定要素があり、高確度の製品ほど、高性能な発振器を備えており、狭い周波数分解能で測定できます。
パルス波の場合は多くの周波数成分の集合体になります。
デューティ比50%の方形波の場合は、良く知られているように
と基本周波数成分と周波数の1/Nに振幅が減少する奇数次高調波成分になります。
もっとも立上り、立下り時間はゼロではなく有限なので、ある次数以上の成分は実質的に無くなります。
波形測定においては計測器に含まれる高調波成分すべてを取込める周波数帯域を持つ必要があります。
周波数帯域が十分でない場合は波形が鈍って表示されてしまいます。
このようにロジック回路で使われるパルス波形は多くの高周波成分を持っています。
この例ではデューティ比50%の方形波ですが、ロジック回路を流れるデータは0、1がさまざまなパターンになります。
その結果、周波数スペクトラムは広く拡散することになります。
もっとも立上り、立下り時間はゼロではなく有限なので、ある次数以上の成分は実質的に無くなります。
波形測定においては計測器に含まれる高調波成分すべてを取込める周波数帯域を持つ必要があります。
周波数帯域が十分でない場合は波形が鈍って表示されてしまいます。
このようにロジック回路で使われるパルス波形は多くの高周波成分を持っています。
この例ではデューティ比50%の方形波ですが、ロジック回路を流れるデータは0、1がさまざまなパターンになります。
その結果、周波数スペクトラムは広く拡散することになります。
図4 正弦波とパルス波の周波数成分
正弦波、パルス波等さまざまな信号を発生するにはジェネレータを使いますが、製品としては大きく2つに分かれます。
ひとつはファンクション・ジェネレータと呼ばれるカテゴリで、最高発振周波数は正弦波で最高200MHz程度、パルス等では1/10程度の周波数になり、パルス出力時の立上り時間は最短で数nsです。
高速性能は高くないですが、変調波等、多種多様な信号を発生できます。
出力インピーダンスは50Ω、同じく伝送インピーダンス50Ωの同軸ケーブルを使い、終端は開放でも50Ωでも使用でき、開放時の電圧は2倍になります(終端的にはバック・ターミネーション)。
もう一つはパルス・ジェネレータと呼ばれるカテゴリです。
高速パルスの発生を主な目的とし、疑似ランダムパターンなどのパルス列を出力できます。
周波数、数100MHzのパルスが出力可能で、立上り時間は1ns以下も実現できます。
高速なため、特性の良い同軸ケーブルと50Ω終端が必要です。
図5 代表的なファンクション・ジェネレータとパルス・ジェネレータ