携帯機器が一般になり、身の回りに電池があふれています。
その電池も1回限りの1次電池ではなく、何回も充電できる2次電池が主流です。
また重い自動車を動かすことも当たり前になりました。
そしてこれら電池に充電するエネルギーの源は商用電源です。
今回は商用電源に関係する問題点と計測の関係について解説します。
国により異なる電源
今では広い電源電圧に対応できる電気製品が多くなりましたが、以前は外国に出かける時には電源電圧が気になりました。今でも電源コンセントの形状には注意が必要ですが。
各国の電源電圧と周波数は図1に示されるように異なります。
電圧では100V/200V系、周波数では50Hz/60Hzに分かれます。
日本では東日本では50Hz、西日本では60Hzです。
余談ですがモーターのインバータ駆動が普及する以前、冷蔵庫やエアコン、洗濯機などのモーターは同期モーターを使っていました。そのため電源周波数50Hz/60Hzに同期して回転していたために東日本の50Hz仕様の製品を西日本で使用すると回転数が1.2倍になってしまいます。
このため回転数を合わせるためのプーリー交換、または製品自体の買い替えが必要でした。
筆者が若いころ、周波数の異なるエリアへの転勤は大変面倒で、買い替えに伴う手当があるほどでした。
今では商用電電から直流を作り、周波数を任意に変えながらモーターを駆動するインバータ式が主流になり、周波数の違いによる不便はほとんど無くなりました。
エアコンやIH調理器等多くの電力を消費する製品では200V対応もあります。
図1 世界の電源事情 (計測技術研究所の資料より引用)
さて世界では多種の電圧・周波数の組み合わせがあります。
100V系でも100V、110V、115V、200V系では200V、220V、230V、240V、しかも三相電力もあります。
製造メーカでは輸出先の電源仕様に合わせて動作試験を行わなければなりません。
(自動車メーカでは仕向け先のガソリンをすべて用意して試験を行っています。ヨーロッパからの輸入車はハイオク仕様となっていますが、ヨーロッパのガソリンのオクタン価は日本のレギュラー・ガソリンとハイオク・ガソリンの中間値だそうです)
また電源は安定しているとは限りません。
日本では電気事業法第26条、同施行規則第38条により次のように決められています。
標準電圧 | 維持すべき値 |
100V | 101V の上下 6V を超えない値 |
200V | 202V の上下 20V を超えない値 |
つまり100Vでは101V±6V、200Vでは202V±20V
になります。
筆者自宅で測定すると時刻により概ね103~104Vで変化しています。
周波数の変動許容値の目安も決められています。
周波数は電力の需給状況により変化します。需要より供給が多ければ周波数は上昇、逆では低下します。
周波数の変動は工業用モーターの回転数に直接影響するため、工場の製品品質に影響を与えます。
このため周波数変動は無いことが望ましいわけですが、電力会社により多少異なりますが、50/60Hz±0.2~0.3Hzと0.5%程度を許容値としています。
風力発電、太陽光発電などは気候の影響により発電量の変化が大きく、電力需要を考えながらコントロール可能な火力発電、水力発電を制御するそうです。
日本に住んでいると台風などの災害以外では停電を経験することは少ないのですが、意外にアメリカのカリフォルニア州では年に1回以上、ヨーロッパ各国でも年に0.2〜0.6回あるそうです。日本の電力事情は非常に良いといえるかもしれません。
交流電源の変動要素は図2のようになります。
周波数、電圧の変動以外にも瞬間的に電圧供給が止まる瞬停、外部のインバータなどが発生源になるノイズ、また波形歪もあります。
図2 電源の変動のいろいろ
このようにいろいろな電源を供給できる機器が交流電源です。
必要な電力に対応できるように電源容量を選べるようになっています。
図3 代表的な交流電源
交流電源は図4のような構造で、一種の増幅器です。
内部信号源で発振した波形を増幅し電源として動作します。
このため発振波形を変更することで出力電圧を自由に変更できます。
図4 交流電源の構造
さらに外部のファンクション・ジェネレータ、高速増幅器を組み合わせることでノイズを重畳することも可能です。
図5ではファンクション・ジェネレータで電源電圧波形とノイズ波形を発生します。
電源電圧波形は交流電源に入力され、既定の電源になります。
ノイズ波形は高周波成分があるため、周波数帯域の広い高速アンプにより増幅され、容量結合により電源に重畳されます。
図5 ノイズが重畳された電源のシミュレーション(㈱エヌエフ回路設計ブロックの資料より作成)