デバイスや装置の電圧-電流特性を求めようとすると、図1のように電源、電圧計、電流計を用意し、接続しなければなりません。そして動作条件(電圧や電流)を変えながら、電圧・電流の測定結果を記録します。恐らく電気・電子系の方は学生実験で経験があると思います。図1 デバイスのV-I特性実験SMU(Source Measure Unit)と呼ばれる計測器があります。図2のようにソース(電圧・電流源)とメジャー(電圧・電流測定)機能が一体化した計測器です。動作条件を変化させ、測定結果をロギングすることが可能です。また電流源はマイナス電流とすることで電流を吸い取る、電子負荷としての動作も可能です。図2 SMUの役割写真1は代表的な一体型SMUです。いずれも2つのSMUを内蔵しています。写真1 代表的な各社のSMU図3はSMUの基本構造です。定電圧源、定電流源、電圧計、電流計の組み合わせで、負荷への印加電圧、電流を測定します。電圧入力のインピーダンスは一般に高いため、電流測定にはほとんど影響は考えないで良いでしょう。図3は2端子測定モードでの測定です。図1の測定と同じ原理です。図3 SMUの基本動作原理2端子測定モードの接続はシンプルですが、図4のようにSMUと測定対象を接続するケーブルには抵抗成分があります。また接触抵抗も不確定要素として誤差の原因になります。ベンチトップ型のデジタル・マルチメータでは4端子測定が可能な製品が多いですが、SMUも4端子測定が推奨されています。図4 2端子測定モードでの誤差要因図5は4端子測定モードです。電流計から測定対象への経路に不確定な抵抗があっても、測定対象を流れる電流を測定できます。またSENSEの入力抵抗は、一般的に10GΩと極めて大きいため、接触不良の影響は皆無と考えられます。図5 誤差要因を排除できる4端子測定モード測定対象のインピーダンスは抵抗とは限りません。容量成分、インダクタンス成分を併せ持つために電圧・電流源はすべての位相条件で動作しなければなりません。そのため図6に示されるように電圧・電流はすべての象限で動作できるように作られています。青い部分が入出力可能な範囲です。図6 4象限で動作できる電源測定対象に加える電圧、流す電流を変化させるために、図7に示すように直線的に変化させることができます。これにより測定対象の直線性を確認することができます。しかし消費電力が大きくなると発熱量が大きくなり、特性が変化する恐れがあります。特に半導体の温度依存は顕著です。その場合はパルス状に電圧・電流を発生するパルス・モードを使用します。図7 連続モードとパルス・モードまた幅広い範囲で設定を変える場合、リニアな変化では設定を変えての測定回数が多くなります。そのため対数で変化できるログ・スイープが用意されます。もちろんパルス・モードの併用も可能です。図8 ログ・スイープDC/DCコンバータの効率測定例DC/DCコンバータの効率を評価するためには入力電力と出力電力をさまざまな電力で測定します。このためには図9のように●直流電源●デジタル・マルチメータ 4台●電子負荷が必要です。さらに自動的に設定を変化させ、測定結果を記録するためには外部PC、アプリケーションが必要です。図9 電力変換効率測定の設定この測定は図10のように2チャンネルのSMUを使用することで簡単に測定が行えます。SMU CH1は入力側でソースとして動作する設定にすることで、入力電力を測定します。逆にSMU CH2はシンクに設定することで、一定電流を吸い込む電子負荷と同等の動作をします。電流源は一定電流を吸い込むこともできるので電子負荷同様に動作できます。これにより消費電力を測定できます。SMU CH2の定電流をスイープさせることで、複数の負荷条件での効率がわかります。図10 SMUによる電力変換効率測定このようにSMUは、手間のかかるDC特性評価を簡単、かつ高確度に実行できる便利な計測器と言えます。