周波数帯域1GHz程度までのオシロスコープは、日常的に最も使われる計測器といえるでしょう。また、デジタル・マルチメータ、周波数カウンタ、さまざまな信号を出力できるファンクション・ジェネレータも便利な計測器です。作業ベンチにこれらの汎用計測器や電源をすべて並べ、さらに特定のアプリケーションに特化した専用計測器まで加えると、ただでさえ狭い作業ベンチがさらに狭くなります。そこで、最近では使用頻度が高いオシロスコープにファンクション・ジェネレータなどの機能を追加搭載できる製品が増えています。図1はファンクション・ジェネレータ、デジタル電圧計、周波数カウンタが搭載できる代表的なオシロスコープと単体のファンクション・ジェネレータです。図1 代表的なマルチ・ファンクションのオシロスコープと単体ファンクション・ジェネレータオシロスコープ内蔵ファンクション・ジェネレータ機能のオプション価格は単体製品を求めるより低価格です。性能は単体製品と比べてどの程度のレベルなのか、はたして目的の用途に使えるのかどうか、テクトロニクスの製品を例に検証してみましょう。図2はテクトロニクスのMSO46ミックスドシグナルオシロスコープのファンクション・ジェネレータ機能と、同じくテクトロニクスのAFG31000シリーズ 任意波形/ファンクション・ジェネレータで出力できる波形の種類です。正弦波、方形波、パルス波、さらにランダム・ノイズなど、出力できる波形の種類に差はほとんどありません。つまり、単純な繰り返し波形の種類に関して差はないことになります。図2 出力可能な波形の種類 (テクトロニクスのデータシートから作成)次に波形の周波数範囲、確度、出力振幅について調べてみます。図3はオシロスコープ(MSO46)、および同等の周波数範囲を持つ内蔵のファンクション・ジェネレータ(AFG31252)の基本性能です。図3 オシロスコープ(MSO46)内蔵のファンクション・ジェネレータと単体ファンクション・ジェネレータの基本性能(テクトロニクスのデータシートから作成)正弦波では、周波数上限はどちらも50MHz、一方下限は0.1Hz(100mHz)、1μHzと大きな開きがあります。しかし、0.1Hz以下の超低周波が必要なければ差はないといえるでしょう。方形波/パルス波に関しては周波数上限・下限ともに差があり、中でも後ほど解説するようにパルスの上限周波数については注意が必要です。周波数確度にも大きな差があり、正確な周波数が必要な場合には単体ファンクション・ジェネレータが優位になります。出力振幅に関しても大きな差があります。図4は出力コネクタに接続した同軸ケーブルの出力端を解放した場合と、50Ωで終端した場合の最大出力電圧です。開放時の最大振幅はオシロスコープ内蔵では5Vpp、単体ファンクション・ジェネレータでは20Vpp、4倍の差があります。オシロスコープ内蔵では50Ω終端時、オフセットを使用してLo 0V-High 5Vの信号には対応できません。図4 出力可能な振幅の比較 (テクトロニクスのデータシートから作成)パルス波の出力というと専用機としてパルス・ジェネレータがありますが、ファンクション・ジェネレータ機能はどの程度まで使用できるでしょうか。図5はファンクション・ジェネレータ AFG31052の最大周波数での出力波形のイメージです。パルスでは40MHzまで可能とありますが、立ち上がり時間は6nsとあります。すると形状はほとんどサイン波に近くなります。パルス幅を40nsまで広くするとパルスらしい形状になることが分かります。図5 ファンクション・ジェネレータ AFG31052で高速信号を出力した場合 (テクトロニクスのデータシートから作成)図6はオシロスコープ内蔵のファンクション・ジェネレータの場合です。パルス波の最高周波数は25MHz、立ち上がり時間は6nsです。高速立ち上がり時間で設定する場合は受信端インピーダンスが解放(無限大)とは限らず、終端反射の影響で波形が歪む恐れがあります。できれば50Ω終端での使用をお勧めします。その場合、出力振幅に制限があるため、単体ファンクション・ジェネレータが有利になります。図6 オシロスコープ内蔵のファンクション・ジェネレータで高速信号を出力した場合 (テクトロニクスのデータシートから作成)出力信号はD/A変換で作られるため、波形メモリに任意の波形データをロードすることで任意波形発生器として使用できます。ただし、オシロスコープ内蔵のファンクション・ジェネレータと単体のファンクション・ジェネレータでは、波形メモリ長に大きな違いがあります。またD/A変換のサンプル・レートにも差があります。図7は波形メモリ長の差、サンプル・レートの差をイメージしたものです。単体のファンクション・ジェネレータでは16Mポイントのロング・レコード、最高サンプル・レート1GS/sにより、1ns時間分解能で約16msの波形が出力できます。オシロスコープ内蔵のファンクション・ジェネレータでは128kポイント、最高サンプル・レート250MS/sにより、4ns時間分解能で約0.5msに制限されます。図7 任意波形出力の差オシロスコープ内蔵のファンクション・ジェネレータと単体のファンクション・ジェネレータでは、最大出力電圧や任意波形出力時間に大きな違いがあり、これは製造コストによるものと思われます。また、単体のファンクション・ジェネレータでは、ロング波形メモリを分割することで波形形状や振幅を連続的に変化させることなども可能です。この機能については別に解説したいと思います。加えて、単体のファンクション・ジェネレータでは出力信号のグラウンドがシャーシ・グラウンドからフローティングされているため、信号抽入の自由度も高くなります。この点も製造コストが関係しそうです。単純な波形を出力させる程度であればオシロスコープ内蔵のファンクション・ジェネレータでも役に立つと思われます。