ジッタとその測定 その2

ジッタが起こる原因は一つではなく、いくつかの原因が考えられます。

ランダム・ジッタ
その一つが熱雑音に起因するジッタです。熱雑音は次の式で表されます。
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KB          ボルツマン常数 1.38×10-23
T            絶対温度
R            抵抗値
Δ        周波数幅

抵抗Rが温度Tにある場合、周波数幅Δでは実効値Vnの雑音が抵抗両端に発生します、これが熱雑音です。

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図1 熱雑音の時間方向の分布

熱雑音は正規分布に近い分布をします。

電源リップルによるジッタ
電源に商用電源由来の電圧変動(リップル)がある場合には両端の密度が高いジッタが生じます。
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図2 電源リップル起因のジッタの分布

信号形状によるジッタ

また信号形状が非対称の場合には図3のように2つのにピークをもつジッタが生じます。

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図3 信号形状起因のジッタの分布

信号伝送路の周波数帯域不足によるジッタ
データ・レートが高まると伝送路における高周波領域における損失が高まります。このため信号の変化が煩雑な場合には十分な信号振幅変化が得られなくなります。
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図4 伝送路の周波数帯域起因のジッタの分布

データ・ラインにはさまざまなハイ・ローパターンの信号があります。このためデータ・パターンにより受信部の波形は大きく変化します。そのため、スレッショルド電圧を切るタイミングがずれてきます。つまりデータ・パターンに依存したジッタが発生します。

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図5 データ・パターンに起因するジッタの発生

データ信号の観測で使われる手法がアイパターン測定です。
データ信号を繰り返し取り込み、オシロスープの画面に蓄積表示させます。最近のオシロスコープでは波形の発生頻度を色で表現するカラーグレーディング表示があり、簡単に表示できます。測定する際にはトリガの選択が大切です。
データ信号をそのままトリガとすると、トリガ・ポイントにおけるジッタがトリガ機能でキャンセルされ、図6のようにジッタが正しく表示できません。
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図6 間違ったトリガ・ソースの選択

トリガ信号としてデータ信号から受信部で再生したクロックを使用すると、図7のようにジッタが表示できます。
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図7 正しいトリガ・ソースによるジッタ観測

図8はアイパターン測定のセットアップです。

受信部のクロック・リカバリ性能を含めて確認できます。
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図8 アイパターン測定のセットアップ

アイパターン測定では統計的にジッタを評価できますが、ジッタの原因を解析するには向いていません。

ランダム・ジッタ以外のジッタ要素がある場合は図9のようにジッタが加算されます。そのためジッタ対策を行うにはランダム・ジッタとほかのジッタを分離しなければなりません。
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図9 現実のジッタは何らかの原因があるジッタに熱雑音起因のランダム・ジッタが加わる

ジッタ解析にはロング・レコードの高速オシロスコープと解析用ソフトウエアを使用します。解析ソフトウエアでは、取り込んだ波形データから理想エッジ位置を演算で検出して、タイムインターバル・エラーを算出、そのデータからジッタを分析します。

分析アルゴリズムは計測器メーカー間で違いがあるようで、解析結果には互換性が乏しいということがありますが、トラブルシュートには十分使用できると思われます。