テクトロニクス社のアクティブ・プローブを他メーカーのオシロで使いたい

高性能なアクティブ・プローブですが、使用にあたっては電源が必要です。最近ではオシロスコープ・メーカーがそれぞれ独自のプローブ・インタフェースを備え、他メーカープローブは原則的には組み合わせて使用できません。しかし一部、アダプタを併用することで可能になるケースがあります。

伝統的なLEMOコネクタ
アクティブ・プローブはオシロスコープの広帯域帰化に伴い、高周波向けプローブとして数10年前より市販されています。以前はアクティブ素子として入力インピーダンスが高いFETが使われ、「FETプローブ」と呼ばれていました。
電源を外部から供給するために、信号ケーブルとは別の電源ケーブルがあり、先端には「LEMOコネクタ」と呼ばれるコネクタを装備、外部電源やオシロスコープに設けられたプローブ電源に接続します。
特に規格化されたわけではないですが、業界標準として±15Vが供給されます。写真1は横河計測社の電流プローブと電源を供給できるオシロスコープ(電源オプション)、および専用電源(スタック電子社製)です。
オシロスコープの入力端子はBNCコネクタで良いため、多くのオシロスコープの入力に対応できるメリットがあります。

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写真1 LEMOコネクタ付きのプローブ電源

テクトロニクス社のプローブ・インタフェースの歴史
オシロスコープの代表的メーカーであるテクトロニクス社ではプローブ・インタフェースを進化させてきました。始めは単なるBNCコネクタだけでしたのでプローブの減衰比による電圧感度の換算はユーザーに委ねられていました。例えば電圧感度0.1V/divで10×プローブを使用した場合は、1V/divと頭で換算する必要があります。
これでは不便であり、プローブのBNCコネクタに抵抗を内蔵し、オシロスコープ側でプローブの減衰比を検知、自動的にオシロスコープ側の感度表示を変化できるインタフェース(TekProbe LEVEL1)が登場しました。
これにより誤測定の可能性が大きく低減できました。他社も準拠する形で採用されています。この点ではプローブの電気的性能を考慮すれば他社製品を物理的に組み置合わせることは可能です。

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図1 テクトロニクス社のプローブ・インタフェースの変遷

次に電源端子をBNCコネクタ周辺に配備したTekProbe LEVEL2が登場、独立した電源ケーブルが無くなり使い易さが大きく向上しました。
電流プローブにおける電流/電圧変換比にも対応し、画面縦軸を電流目盛りとして直読可能になりました。さらにプローブ、オシロスコープ間の通信機能を追加したTekVPI、特にハードキーを設けたタイプは専用プローブ(TPP1000等)を使用した場合、プローブの製造番号を認識、オシロスコープのチャンネルと各プローブの組み合わせを考慮して補正を記憶することができるようになりました。
さらに最新プローブ・インタフェースFlexChannelではロジック・プローブ接続に対応しています。

今でも使われているTekProbeLEVEL2

テクトロニクス社ではプローブ・インタフェースの主流はTekVPI、FlexChannelに移っていますが、現在でもTekProbe LEVEL2仕様のプローブは販売されています。写真3は現行製品の一部です。
特にAC/DC電流測定システムは他社計測器、例えばデータ・レコーダとの組み合わせが容易、また差動プリアンプ ADA400Aは微小信号測定用に1000倍の感度まで得られる特異な製品です。
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写真2 TekProbe LEVEL2を使った製品例

TekProbe LEVEL2を汎用的に使用する場合は図2のように写真3の1103型を併用します。

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図2 外部電源の使用例

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写真3 テクトロニクス社の外部電源

TekProbe LEVEL2仕様のプローブを現行のTekVPIインタフェース仕様のオシロスコープ(MDO4000Cシリーズ等)で使用できる様に変換アダプタが用意されています。

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写真4 新旧プローブ変換に使うアダプタ

テクトロニクス社のプローブを他社のオシロスコープで使うには
オシロスコープ・メーカーは独自のプローブ・インタフェースを設けています。
写真5 はキーサイト・テクノロジーと横河計測の例ですが形状が全く異なり、物理的な互換性は全くありません。唯一、パッシブ・プローブの感度換算ができるだけです。

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写真5 新しいプローブ・インタフェース

テクトロニクス製、特にTekProbe LEVEL2仕様のプローブは生産期間も長く、世の中で多く使われ続けてきました。テクトロニクス製以外のオシロスコープとTekProbe LEVEL2仕様のプローブを組わせたいという要望も当然生まれてきます。
そのため幾つかのメーカーより自社プローブ・インタフェースへの変換アダプタが用意されています。
写真6はキーサイト・テクノロジーとテレダイン・レクロイ社のアダプタです。

残念ながらTekVPI以降のプローブ・インタフェースではプローブ・オシロスコープ間で通信が行われているためか、変換アダプタは用意されていないようです。

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写真6 テクトロニクス製のプローブを使えるアダプタ