ファンクション・ジェネレータの出力アップ

サイン波、パルス波だけでなくランプ波、変調波、PWM波など、多様な信号を出力できるファンクション・ジェネレータは便利な製品です。写真1は代表的なファンクション・ジェネレータです。使用されるD/A変換器、増幅器の性能に依りますが、最も高速な製品では立上がり時間が数nsのパルスに対応できるまでに高速しています。

image-20240124145625093.png
写真1 代表的なファンクション・ジェネレータ

一方出力電圧には限界があります。
図1のようにほとんどの製品が解放終端にて±10V、50Ω終端では±5Vの範囲になります。ファンクション・ジェネレータとは基本的に出力インピーダンスは50Ωの電圧源です。

image-20240124150330534.png
図1 ファンクション・ジェネレータの出力範囲

このためファンクション・ジェネレータ単体で重たい負荷に電流を流してドライブする、また高電圧でドライブすることはできません。外部の増幅器を併用することになります。

図2は定電圧モードで100倍のゲインを持つ電力増幅器の例です。出力電力は製品によりますが数100W~数kWまで対応できます。

image-20240124150440220.png
図2 電力増幅器により負荷を高電圧でドライブ

写真2はエヌエフ回路設計ブロックの製品例です。
image-20240124150502807.png
写真2 代表的な電力増幅器

単純な抵抗負荷ないし抵抗負荷に近い場合は電力増幅器が使用できますが、負荷には誘導成分、容量成分が大きく含まれる場合があります。抵抗成分がほとんど無い場合もあるでしょう。

図3はインダクタンス1mH、抵抗成分10Ω、線間の寄生容量100pFのインダクタに10kHzの正弦波を加えた場合の電流―­電圧特性のシミュレーション結果です。
電源から見ると右上、左下が電流を出力している範囲、右下、左上が電流を吸い込んでいる範囲です。ダイナミックに位相が変化していることがわかります。

image-20240124150550690.png
図3 インダクタに加えた電圧と電流の関係
 
圧電素子は直列接続されたインダクタンス、キャパシタンス、抵抗に並列にキャパシタンスが加わった等価回路で考えることができます。
インピーダンス、位相特性をシミュレーションした結果が図4です。

image-20240124150710066.png
図4 圧電素子を想定したインピーダンス、位相特性のシミュレーション結果

また周波数を共振周波数付近で変えながら電圧と電流の流れをシミュレーションした結果が図5になります。

image-20240124150733159.png
図5 周波数を変えて電流-電圧特性をシミュレーション

図6のように負荷によっては、象限を4か所に分けて考える必要があり、通常の電源(増幅器)では対応できないケースがでてきます。

image-20240124150801730.png
図6 位相によっては電源が電流を吸い込む場合もある

この場合にはドライブ電力の点で前述の電力増幅器には及びませんがバイポーラ(2極)電源が有効です。

バイポーラ電源は図7のように入力インピーダンスが50Ω、出力インピーダンスは極めて低く負荷をドライブできます。また周波数範囲も電力増幅器より広くなります。

image-20240124150839295.png
図7 代表的なバイポーラ電源の入出力インピーダンスと出力電圧

写真3はエヌエフ回路設計ブロックの製品例です。

image-20240124150859123.png
写真3 代表的なバイポーラ電源

電力増幅器もバイポーラ電源もファンクション・ジェネレータに接続して負荷をドライブできますが、図8のように対応できる周波数範囲、負荷の形態に差があります。

image-20240124150922635.png
図8 電力増幅器とバイポーラ電源の比較

またバイポーラ電源は扱える周波数が高く、また出力電力が高いために設置​にあたっては、電波法の規定により総務省への許可申請が必要になることがあることにご留意ください。