信号が高速でなければプローブの先は延長できるのだろうか

プロービングに関する問題点は最短距離でプローブをターゲットに接続できないことがあります。プローブ先端にリード線を付加する方法は信号が高速の場合振動を発生することはよく知られていますが、信号が高速でない場合は使えるのでしょうか。
実験、シミュレーションで検証してみます。

オシロスコープ付属のプローブ先端にリード線を接続する実験

代表的な汎用オシロスコープである、横河計測のDLM3000シリーズ、テクトロニクスのMSO4シリーズ、いずれの場合も1.3mのプローブが付属します。

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図1 付属プローブは1.3m程度の長さが多い

今回の実験は横河計測、DLM3053付属のプローブ(701937)で行いました。写真1のようにプローブ先端にツイストした30cmのリード線を追加しました。

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写真1 プローブ先端に30㎝のツイスト線を追加

この方法の等価回路は図2になります。プローブ本体の入力抵抗10MΩ、並列の10pFにリード線の寄生インダクタンスと寄生容量が加わります。

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図2 プローブ先端を延長したときの電気要素

寄生インダクタンスと寄生容量をLCRメーターで測定したところ

寄生インダクタンス 262nH 
寄生容量 14.7pF

でした。
リード線はインダクタンスを減らすため、また飛び込みノイズの影響を減らすためにツイストしてあります。

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写真2 延長リード線のインダクタンスと容量

このパラメーターを考慮しシミュレーションした結果が図3です。リンギングを減らすためのダンピング抵抗をなし(0.1Ω)、100Ω、165Ω、180Ω、200Ωと変化させました。

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図3 ダンピング抵抗を変えたときのプローブ出力のシミュレーション結果

シミュレーションでは、ダンピング抵抗を200Ω程度にすることで、共振による影響から逃れることができそうです。

実力を実機で検証
図4の設定で延長リード線の影響とダンピング抵抗の効果を調べました。チャンネル1にはテスト波形そのものが、チャンネル2にはプローブ出力が表示されます。

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図4 プローブの評価方法

図5はプローブ未接続でのテスト信号波形です。立ち上がり時間は1.8nsです。

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図5 リファレンス波形

ダンピング抵抗なしでのプローブ出力の結果が図6です。予想通り大きな共振が発生しており、これではプローブとしては使えません。プローブの負荷効果により元の信号にも影響を与えています。図3のシミュレーション結果とも一致した結果です。

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図6 ダンピング抵抗なしの場合

リード線先端に200Ωを挿入したプローブ出力の結果が図7です。共振現象を抑えることができました。プローブの負荷効果も少なくなっています。立ち上がり時間が5.8nsと大きくなることに留意すれば電気的には使えそうです。
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図7 延長リード線先端に200Ωを挿入

延長リード線によるノイズの問題

延長されたリード線がアンテナになり、ノイズを拾うことが懸念されます。図8は標準のグラウンド線をプローブ線に接続した時のノイズです。当然ですがノイズはあまり多くはありません。

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図8 標準状態のプローブが拾うノイズ

延長リード線を取り付けると予想通りノイズが多くなります。図9のノイズは室内照明機器の発するノイズです。リード線をツイストしてもやはりノイズ耐性は劣化しています。

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図9 延長リード線が拾ったノイズ

外部のノイズからの影響が大きくなりますが、ノイズの少ない環境で、かつプローブの入力容量の増加、周波数帯域の低下などが問題にならない場合であれば、ある程度実用的になると思われます。

この実験は一例です。プロービングは最短で行うことがベストであることは言うまでもありません。延長に際しては、それによる影響を十分に考慮して行ってください。