周波数を測る機会があると思います。オシロスコープの波形パラメータ計測機能を使用すれば、波形を確認しながら簡単に測定することができます。その一方で周波数を専門に測定する計測器として周波数カウンタがあります。両者はどのように異なるのか、動作原理から探ってみます。言うまでもなく、周波数とは繰り返し信号が1秒間に繰り返す回数のことです。そして周期は1繰り返しの時間であり、周波数の逆数になります。図1 周波数と周期の関係周波数、周期は身近なオシロスコープで簡単に測ることができます。1周期を画面の目盛りから読み取る、またはカーソルから読み取ることができますが、その分解能はせいぜい1%程度でしょう。より分解能を高めるには、波形パラメータ自動計測機能を使います。図2のように波形データはサンプリングされた離散データです。分解能を高めるためにサンプリング・ポイント間を補間することで、基準レベルとのクロスポイントを算出します。しかし、あくまでもサンプルされたデータから周期を求めていること、またオシロスコープ内部のA/D変換器のクロック確度は10ppm程度であるため、正確さに多くは期待できません。図2 オシロスコープの波形パラメータ演算の動き周波数をより正確に測定するためには、周波数カウンタを使用します。写真1は代表的な周波数カウンタで350MHzまでの周波数を12桁の分解能で測定可能、2つの入力があります。写真1図3はキーサイト・テクノロジー 53230Aのデータシートの抜粋です。タイムベースの不確かさには、図3の上に記載されるように「タイムベースの不確かさ=経年劣化+温度変動+校正の不確かさ」になるため標準仕様にて概ね2ppm程度が、オプションの超高安定OCXO(オーブンと恒温槽を備えたクロック源)では1000倍が得られます。図3 キーサイト・テクノロジー 53230Aのタイムベース確度周波数カウンタの動作原理はシンプルです。図4のように入力された信号は波形整形されます。周波数カウンタの内部には高確度高安定のクロックがあり、これにより例えば正確に1秒間ひらくゲートを作ります。波形整形された信号はこのゲートを通り、そのパルス数をカウントすることで周波数が求まります。図4 周波数カウンタで高周波の周波数を測る場合ただし、この手法では低周波信号の周波数を測定するには長時間ゲートを開かねばならず、非現実的です。そこで低周波では図5のように入力信号の1周期だけゲートを開き、高精度クロックを通過、クロック数がわかれば周期が求まります。図5 周波数カウンタで低周波の周波数を測る場合これが基本原理ですが、実際の製品ではさらに分解能を高めるために補間機能を併用しています。周波数カウンタは単に周波数、周期を測るだけではありません。2つの信号間の時間差を正確に求めることができます。図6の2つの信号間の時間差はオシロスコープで求めることもできます。しかしオシロスコープにはサンプル・レート、レコード長の制限、またA/D変換器クロックの確度、安定度の点から高い確度で測定することには無理があります。2入力をもつ周波数カウンタでは2信号間でゲートを開くことで時間差を測定することができます。図6 周波数カウンタによる時間差測定周波数確度をさらに高めることもできます。入手可能なもっとも安定し、周波数確度の高い信号源はルビジウム発振器です。周波数カウンタには外部タイムベース入力があり、ルビジウム発振器と同期することで大幅に確度を向上できます。オプションのOCXOに比べて2桁程度の向上が期待できます。図7 より高確度な外部発振器を使う方法