絶縁入力とそのメリット

多くの計測器の入力端子は非絶縁入力です。図1は横河計測のオシロスコープ DLM3000シリーズの例です。
CH1~CH4すべての入力端子のグラウンドは共通で、かつ電源部を通して大地グラウンドにつながっています。
(DLM3000シリーズの入力インピーダンス:1MΩと並列に16pF)

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図1 オシロスコープは非絶縁入力

オシロスコープだけでなく扱う周波数が高いスペクトラム・アナライザ、周波数カウンタ、パルス・ジェネレータなども非絶縁入力ないし出力になります。

一方、扱う周波数があまり高くないレコーダ、デジタル・マルチメータ、電力計(パワーアナライザ)、信号発生器のうちファンクション・ジェネレータなどは絶縁入力/出力がほとんどです。

絶縁入力により、オシロスコープにプローブを使用した場合もプローブのグラウンド線は共通になります。オシロスープでは基本的に各チャンネル、グラウンド電位を基準に測定します。

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図2オシロスコープなど非絶縁入力とプローブ

任意の2点間の電位差を測定する場合は図3のように2本のプロープを用い、オシロスコープの波形演算機能で引き算を行います。
測定では二つのチャンネルの感度を合わせる必要があります。

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図3 疑似差動測定

一方、レコーダなどの絶縁入力では図4のようにすべての入力グラウンドが独立、大地グラウンドからも浮いています。もちろん入力電圧の制限、対地電圧の制限はありますが、測定対象への接続の自由度は高くなります。

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図4 絶縁入力の波形測定器

写真1は代表的なレコーダです。アプリケーションにより側面に挿入するモジュールを選択しますが、図5のようにほとんどのモジュールは絶縁モジュールです。

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写真1 代表的なレコーダの本体

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図5 代表的なレコーダ用モジュール (横河計測、日置電機のカタログより作成)

絶縁入力はグラウンド基準で測定する場合でも有利です。図6のようにワイヤ・ハーネスで接続されたモジュール間の信号を測定するケースを考えてみましょう。ハーネスのグラウンド・ラインは共通なので、どこでも電位は変わらないように思えます。
しかし、リード線には直流抵抗(DCR)だけではなく寄生インダクタンスがあります。寄生インダクタンスは思ったよりも多く、1mあたり約1μHです。グラウンドにはリターン電流が流れるため、インダクタンスの影響により電流の変化に比例した電位がグラウンドに発生します。

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図6 寄生インダクタンスの悪影響

この電圧はノイズとなり図7のように信号に重畳してしまい、正確な波形測定ができません。グラウンドにはリターン電流が流れるため、インダクタンスの影響により電流の変化に比例した電位がグラウンドに発生します。

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図7 接続ケーブルにより発生するノイズ

絶縁入力の場合は図8のように各プローブはそれぞれのグラウンド基準で波形を取り込むために、ノイズの影響から逃れることができます。

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図8 絶縁入力によるノイズ低減

このように波形取り込みに有利な絶縁入力ですが、オシロスープなどの高周波を扱う計測器では採用されません。それは絶縁を行うためには電気光変換、光電気変換を行うなどの手法が必要なため、高帯域化が困難だからです。絶縁入力に近い効果を得るためには差動プローブの採用が有効です。

写真2は代表的な差動プローブです。
各メーカーのオシロスコープ専用になること、入力電圧、対地電圧の制限があることに注意して使用することで、良好な波形測定を行うことができます。

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写真2 代表的な差動プローブ