危険な電圧として「42V」があります。「42Vは死にボルト」という言葉がありますが、42Vで感電すると必ず命に危険が及ぶというわけではありません。感電の危険性は電圧だけでは決まりません。身体を流れる電流の大きさが重要で、100mAで致命的と言われています。とはいっても電流は流れる対象のインピーダンスで決まるので、一般的には高電圧に細心の注意を払います。図1はデジタル・マルチメータやオシロスコープ用高電圧プローブで使用できるアタッチメントです。右のテスト・リードの先端は一般的に4mmプラグ(オス)になっており、各種先端部に取り付けます。左上は一般的なテスト・プローブですが、高電圧の場合は安全を考慮して先端がクランプになったもの、また大型クリップを選択します。図1 各種アタッチメント図2はベンチトップ型デジタル・マルチメータに同梱のアクセサリ例です。テスト・リード先端は固定された針先ですが、先端に取り付け可能なアタッチメントが用意されています。図2 あるベンチトップ型デジタル・マルチメータのアクセサリ図1左下にある大小のクリップですが、低電圧(42V以下)の場合は小型クリップ、高電圧の場合は大型クリップを使用します。図3のように、小型クリップは金属部分と指先間の距離が狭いですが、大型クリップは十分な距離が得られるので、安全性が高くなります。大型のクリップは使いにくいかもしれませんが、安全確保の上からもこちらを使用するようにしましょう。図3 電圧にあわせてクリップの大きさを選ぶデジタル・マルチメータの入力端子、直流電源の出力端子に同軸ケーブルを接続したい場合があります。図4はそのための変換アダプタですが、使用には注意が必要です。図4 プラグ-BNC変換アダプタ図5のようにアダプタのポッチ側はBNCコネクタの外側に接続されていますから、グラウンドが浮いている回路では触れると感電の恐れがあります。図5 感電の恐れがあるケースデジタル・マルチメータによる測定では直流、ないし低周波なのでアタッチメント類の寄生インダクタンスを考慮する必要はありませんが、オシロスコープ用プローブでは寄生インダクタンスの悪影響に注意が必要です。高電圧の波形測定では減衰比100:1ないし1000:1の高電圧プローブを使用します。これは実際にあった事例ですが、高電圧の測定ポイントに近づく危険性を減らすために、図6のようにプロープの先端、及びグラウンド線の両方に長い線を取り付け、「十手」のような形で使用したというものです。図6 改造された高電圧プローブ使用された高電圧プローブは減衰比が100:1、周波数帯域 500MHz、入力抵抗は40MΩ、入力容量は2.5pFです。プローブのデータシートの特性図から読み取ると、プローブの等価回路は図7のように40MΩと2.5pFが並列に、そして100Ω程度が直列に入っているようです。またプローブ内部の寄生インダクタンスは10nHと仮定しました。このプローブ先端に25cmのリード線(寄生インダクタンス 約250nH)、30cmのグラウンド線(約300nH)を付加し、立ち上がり時間5nsのパルスを入力した場合の影響が図7です。プローブの入力容量と寄生インダクタンスによる共振現象が確認できます。図7 寄生インダクタンスと入力容量による共振現象共振周波数は f=1/(2π√LC) により、約130MHzになります。この共振現象による振動はダンピング抵抗により低減できます。図8 振動を抑えるダンピング抵抗図9は100Ωのダンピング抵抗を挿入した場合のシミュレーション結果です。共振現象をある程度抑制できますが、まだ抵抗が足りないようです。図9 ダンピング抵抗の効果図10は信号の立ち上がり時間を10nsに、図11は20nsにした場合です。共振現象はさらに減少し、ほとんど悪影響は見られません。図10 信号の立ち上がり時間が10nsの場合図11 信号の立ち上がり時間が20nsの場合このプローブの持つ500MHzという周波数帯域を活かすことはできませんが、立ち上がり時間が速くない信号に制限した場合は使用できることが分かります。感電の危険性を少なくするためには測定対象から距離を置くことが最善の策ですが、計測の面から考えると問題が発生するケースがあります。計測器を工夫して使用、または使用範囲を制限することで問題を回避することができます。